「__私はケーキが食べられない」
【あらすじ】
アンティーク調の椅子に腰掛け、目覚めた場所はまるでドールハウス。高価そうな食器に乗る3皿のケーキと紅茶。だが、貴方は“特定のケーキが食べられない”。
【ho1】貴方はショートケーキが食べられない。なぜなら、酷く孤独を感じるから。
【ho2】貴方は赤いケーキが食べられない。なぜなら、酷く絶望を感じるから。
【ho3】貴方はチョコレートケーキが食べられない。なぜなら、酷く空虚を感じるから。
《pixivに投稿していたものと同じもの投稿しています》
「__私はケーキが食べられない。」
このシナリオは感じ方によっては後味が悪いかもしれません。それを踏まえた上で遊んで頂ければ幸いです。
仲の良い方、もしくは後味の悪さが主食の方に回すことをお勧め致します。
アンティーク調の椅子に腰掛け、目覚めた場所はまるでドールハウス。高価そうな食器に乗る3皿のケーキと紅茶。だが、貴方は特定のケーキが食べられない。
【ho1】貴方はショートケーキが食べられない。なぜなら、酷く孤独を感じるから。
【ho2】貴方は赤いケーキが食べられない。なぜなら、酷く絶望を感じるから。
【ho3】貴方はチョコレートケーキが食べられない。なぜなら、酷く空虚を感じるから。
探索者は皆、7歳の誕生日に凄惨な出来事を体験している。どういった巡り合わせか、似たような境遇を持つものたちが、クローズドサークルに呼び寄せられたようだ。それは、本当は心の何処かで真実を知りたがっていたから辿り着いたのかもしれないし、どこかの邪神の気まぐれかもしれない。
当時まだ幼かった探索者たちにとっては、あの経験はあまりにもひど過ぎた。憐れに思った精神科医の老夫は、世界を飛び回っていた頃に会得した“記憶を曇らせる”魔術を探索者に使用すると、『君たちは無意識のうちに記憶を奥底へと隠してしまった』という事にして、幼い探索者の心の均衡を保てるようにする。
それから、あの凄惨な誕生日と結び付くケーキに、とてつもない嫌悪感を抱くようになるが、それが何故なのかは、探索者には分からない。
・プレイ時間 2時間~
・人数 3名
・推奨技能 目星、図書館、RP多めです
・形式 クローズド
※どうぞ心行くまで、大好きだった人たちとのRPをしてください。
※新規探索者推奨。年齢は25歳前後。同じ町に住んでいる。
※感じ方次第では鬱々としているだろう。それを理解の上で遊んで頂きたい。
※記憶を思い出す事でsancが入るが、辛い記憶に触れているので正気度は減る。勿論、報酬にsan回復などはない。
※なぜ一様に七歳なのか。それはラッキーセブンだからである。
※なぜドールハウスなのか、それは探索者が過去に連れてかれたカウンセリング室が、そういった子供向けの可愛らしい部屋だったからだ。
【HO1】 貴方はショートケーキが食べられない。なぜなら、酷く孤独を感じるから。唯一の肉親、母親は亡くなっている。だが、なぜ死んだかのか記憶がない。
※食べられないと表記しているが、“食べたくない”の方が正しい。
【HO2】 貴方は赤いケーキが食べられない。なぜなら、酷く絶望を感じるから。父、母、年の離れた妹は亡くなっている。だが、なぜ死んだのか記憶がない。
※食べられないと表記しているが、“食べたくない”の方が正しい。
【HO3】 貴方はチョコレートケーキが食べられない。なぜなら、酷く空虚を感じるから。父、母、そして生後まもない弟は亡くなっている。だが、なぜ死んだのか記憶がない。
※食べられないと表記しているが、“食べたくない”の方が正しい。
【HO1】 唯一の肉親である母親を7歳の誕生日に交通事故で亡くしている。母が最期に作ってくれたのが、探索者の大好きなショートケーキだった。カウンセリングを行った精神科医の老夫に魔術を掛けられ、記憶が曇っている。
【HO2】 7歳の誕生日に家族を猟奇殺人鬼に殺害されている。そして、その犯人に家族で作った赤い人肉ケーキを無理やり食べさせられた。カウンセリングを行った精神科医の老夫に魔術を掛けられ、記憶が曇っている。また、この猟奇殺人鬼はイゴーロナクに憑依されていた。
【HO3】 7歳の誕生日に家族が探索者を残して一家心中していた。理由は母の若年性アルツハイマーによる介護疲れと、生まれてまだまもない弟の世話によるものだった。その日は父からお金を貰って、自分の好きなチョコレートケーキを買って帰った。カウンセリングを行った精神科医の老夫のに魔術を掛けられ、記憶が曇っている。
※事前に家族との最も幸せだった思い出を詳しく(いつ、どこで、何歳頃、何をした等)聞いておき、それを導入前にRPすると入り込みやすいのではないだろうか。KPPL双方の肩慣らしも兼ねている。また、バッドエンドでは幸福な記憶も含めて消失するため、辛さがより倍増するかもしれない。
また、PCは7歳のときに家族を亡くしているが、PLはそのことを知らないので、7歳以上の頃の思い出を提出してくるかもしれない。そういったときは、“記憶を曇らせる”魔術によって記憶が入り混じり、曖昧になってしまっている、ということにすればよいだろう。
例)探索者は夢を見ている。これは家族との、最も幸せなひとときの夢だ。(RP)→導入に繋げる等
ピアノやオルゴールの優しい音色が聞こえる。その心地よさに身を委ねながら、不意に目覚めた探索者は、アンティーク調の椅子に腰かけていた。辺りを見渡してみれば、まるでそこはドールハウスのようだ。自分以外にも人がおり、テーブルを囲むように向かい合って座っている。
そして、混乱する探索者の鼻先を甘い香りが掠めた。テーブルに視線を落とせば、探索者の前には、高価そうな食器に乗せられた1皿のケーキと紅茶。普通なら顔が綻ぶのであろうが、探索者は反射的に顔を強張らせることだろう。
__なぜなら貴方は、特定のケーキが食べられない。いいや、食べたくない。
見知らぬ場所にいたことと、大嫌いなケーキを目の当たりにした探索者は<sanc1/1d2>
※導入は此処までです
【探索】
辺りを見渡す→
正方形のこじんまりとした部屋だ。壁掛け時計があるが、針が休むことなくぐるぐると回転し続けており、時計の意味を成していない。また、扉は無いが小窓はある。テーブルと三脚の椅子。ピアノ、小さな戸棚と本棚、ベッド、壁掛けの電話などもある。
・テーブル
木製の丸テーブル。椅子と同じくアンティーク調。繊細なレースのテーブルクロスが掛けられている。また、テーブル中央には硝子製の花瓶があり、品のある青紫色の花が活けられていた。
<知識>
ジャーマン・アイリス(別名:虹の花)とも呼ばれ、花色と香りが大変豊かであることを知っていた。
[テーブルクロス]<目星>
汚れている訳ではないが、新品というよりかは何年も清潔に保ちながら使っているように感じた。
[花・花瓶]硝子製の花瓶には細やかな装飾が施されている。花びらには水滴がついていた。
花びらに水滴がついていることから、探索者は自分達がここに来る直前まで、誰か居たのではないか?と感じる。だが、ここには扉も無ければ、人の出入りが不可能な小さな小窓しかない。自身らはどうやってここまで連れてこられたのだろう?<sanc0/1>
・ケーキ
【HO1】の目の前には、苺のショートケーキと紅茶が置かれている。また、紅茶の隣には手のひらに収まる程度の紙が置かれている。紙には鮮やかなピンク色の花が添えられていた。
【HO2】の目の前には、真っ赤なラズベリーソースで覆われた赤いケーキと紅茶が置かれている。また、紅茶の隣には手のひらに収まる程度の紙が置かれている。そして、紙には生命力に溢れた黄色の花が添えられていた。
HO2はこのケーキから猛烈な腐臭と生臭さを感じる。目が回り、胃酸が込み上げる味がした。貴方の体、細胞の一つに至るまで、このケーキを拒む。じわじわと絶望感が体を侵食した。<sanc1/1d2>
※他の探索者はラズベリーソースのケーキにしか見えないし、そのような臭いも感じない。
【HO3】の目の前には、つやつやと輝く濃厚なチョコレートケーキと紅茶が置かれている。また、紅茶の隣には手のひらに収まる程度の紙が置かれている。そして、その紙には星形の白い花が添えられていた。チョコレートケーキは、何故か少し溶けかかっていた。
[紙]※全員内容は同じ。パズルとは探索者の記憶のことである。
『お誕生日おめでとう。
パズルを完成させるなら甘いケーキを。パズルを完成させないなら温かな紅茶を。パズルを完成させた上で壊すなら、ケーキと紅茶を。』
※記憶を取り戻した上で、忘れてしまうならどちらも食べなさいということ。
「お誕生日おめでとう」という文字を目にした探索者は回想RP(出きるだけ幸せなRPをすると良い)
【HO1】→誕生日。一体誰のだろう。
疑問を浮かべる探索者の視界は、砂嵐のように閉ざされた。誰かが貴方の名前を呼んでいる。懐かしい声に、懐かしい香り。視界が開け、その声の主へ振り返ると、そこに居たのは貴方の母だ。自身の目線がかなり低い。見上げるようにして見つめた母は、貴方のよく知る笑顔で笑いかけてくれた。
「(探索者名)?そんな顔して、どうしたの。今日は(探索者名)の誕生日でしょ。……もう、6歳になったんだね。お母さんの所に産まれてきてくれて、ありがとう。(探索者名)は、お母さんの宝物なんだから。ほら、今日は(探索者名)の大好きなショートケーキを作っちゃったよ~!早くこっちにおいで!」
といって、手を伸ばしている。
……
母の手を掴もうと貴方も手を伸ばすが、母の手を掴むことはできなかった。気がつけば、この部屋には誰もいない。薄暗い部屋。テーブルに残された書き置き、窓の外は吹雪だった。
……
瞬きをすると、そこは元のドールハウスだ。今の映像はなんだったのだろう。
【HO2】→誕生日。一体誰のだろう。疑問を浮かべる探索者の視界は、砂嵐のように閉ざされた。何処かで、誰かが貴方の名前を呼んでいる。
「お兄ちゃん(お姉ちゃん)!ねぇ、お兄ちゃん(お姉ちゃん)ってば!」
舌ったらずな甲高い声。貴方の腕を引っ張るのは年の離れた妹だ。彼女は腕の中に、お気に入りのテディベアを抱きしめ、貴方を見上げている。ただ、おかしなことに、妹と目線が多少しか違わない。
「ぼーっとしてどうしちゃったの?具合悪いの?えーっ、お兄ちゃん(お姉ちゃん)今日誕生日なのに!私が早く良くなるおまじないかけてあげる!痛いの痛いのいなくなれ!えへへ、良くなったー?」
……
そう騒がしくしていると、キッチンから声がかかる。
「さっきから何してるの?」
そういって出てきたのは、母、そして父だ。そうか、二人はこんな声をしていたのか。すっかり聞かなくなって、忘れかけていた。
「お兄ちゃんね、なんか具合悪いみたい!」
「そうなのか!?記念すべき6回目の誕生日だって言うのに、(探索者名)もついてないなぁ。(探索者名)、どこが痛いんだ?」
目線を合わて屈んでくれた父。貴方が何か言葉を紡ごうと口を開くが、気がつけば、父も母も、妹さえも忽然と姿を消していた。先程までの団欒の香りとは一転、貴方の肺を満たすのは濃密な鉄臭さ。
貴方は血溜まりの中心に座り込み、ぼろぼろに解れた赤いテディベアを両腕に拾い上げた。
……
瞬きをすると、そこは元のドールハウスだ。今の映像は何だったのだろう。
【HO3】→誕生日。一体誰のだろう。
疑問を浮かべる探索者の視界は、砂嵐のように閉ざされた。子供が泣きわめいている。慌ただしく走り回る足音。子供をあやす男女の声。そんな騒々しさに負けじと、蝉が喧しく存在感を露にしていた。
「(探索者名!)ごめん、そこのミルクの缶とってくれる?」
優しげに微笑む父。あぁ、疲れきって。こんなに父はやつれていただろうか。父の表情からは疲れが滲み出ていた。自身の目線がいつもより低い気がする。
「(探索者名)、いつもありがとう。我が儘の一つも言わないで、父さんの手助けしてくれて、父さん、いつも助かってるんだ。でも、今日は(探索者名)の6歳の誕生日だから、甘えて良いんだぞ!いつも、他のことに手が掛かりっきりで、構ってあげられなかったからな!実は(探索者名)の好きなチョコレートケーキもあるぞ……!」
……
車椅子の母は、幼い弟を抱えている。貴方に気がつくと
「(探索者名)、お誕生日おめでとう。あっという間に大きくなるのねぇ。もう6歳かぁ。ほら、(探索者名)、おいで。」
いつも母の腕に抱えられているのは、産まれてまもない弟ばかりであった。
「私、貴方が大人になるまで生きていられるかしら。大人になった(探索者名)は、きっと素敵な人になっているのでしょうね。……私、生きていたい。いつも迷惑かけてごめんね、(探索者名)」
……
気がつくと、母の温もりも、香りも、何もかもが消え失せていた。ただ、薄く開いた窓から、蝉の鳴き声だけが明瞭に聞こえる。夕暮れ時の薄暗い部屋の中で、何かが揺れていた。皆、お揃いの紐を首につけて。
……
瞬きをすると、そこは元のドールハウスだ。今の映像は何だったのだろう。
・添えられている花
【HO1】鮮やかなピンク色の花
<知識> エリカという花であると知っていた。
【HO2】生命力に溢れた黄色の花
<知識>マリーゴールドという花であると知っていた。
【HO3】星のような形をした白色の花
<知識>スター・オブ・ベツレヘムという花であると知っていた。
※もしこの<知識>でクリティカル等がでれば、花言葉も分かって良いかもしれない。
・本棚
探索者の腰の高さ程度の小さな本棚。
※花言葉や花の名前が知りたければ<図書館>に成功でそれにちなんだ本を見つけられる。植物図鑑など限定して探せば、技能ロールは要らないだろう。
エリカ……孤独、寂しさ、博愛
マリーゴールド……絶望、悲しみ、変わらぬ愛
スターオブベツレヘム……空虚、純粋、潔白
ジャーマン・アイリス……恋の便り、情熱、記憶の断片
<図書館・目星>
本棚の奥に紙が挟まっている。
取る→しわくちゃな紙だ。黄ばんでいる。
<聞き耳> この紙から微かにアンモニア臭がする。
読む→『なにひとつ守れなかった、弱い父さんをゆるさないでください。あまやかしてあげられなくて、ごめんなさい。』<母国語ロール>
※【HO3】のみの回想ロール
※【HO3】はこの手紙を読んだ経験があるので、母国語ロールは必要ない。
探索者はこの手紙を昔読んだことがある。この手紙は液体の中に浸っていた。視界が揺れ、体が火照る。手が震えた。貴方は、その手紙から目が離せない。
……
気がつけば、朝を迎えた部屋の中。背丈は7歳程度。揺れる塊の下には小さな水溜まりができていた。その水溜まりからは、仄かなアンモニア臭。そして、紙切れが落ちていた。小さな手で拾い上げ、滲んだ文字を目で追った。
『なにひとつ守れなかった、弱い父さんをゆるさないでください。あまやかしてあげられなくて、ごめんなさい。』
紛れもない父の字。当時の貴方には、この言葉の意味がよくわからなかった。
……
息苦しさで意識を取り戻す、そこは元のドールハウスだ。
<sanc1/1d2>
・窓
小さな小窓。鍵が無いため開けることは出来ない。外は森のような自然が広がっており、ほんのりと木漏れ日が差し込んでいる。
壊そうとする
水族館の重厚な水槽のようだ。傷一つつかない。
※【HO1】のみの回想RP
探索者が窓の外を見ると雪が激しく降っていた。猛吹雪である。突如、キリキリと頭を締め付けるような鈍い頭痛。 点滅する視界。探索者は突如、孤独にかられる。
……そうだ、貴方は吹雪の日に、母の帰りを待ち続けていた。
……
気がつけば、そこは貴方が昔、母と二人で暮らしていた家だ。目線が低い。体が縮んでいる。7歳くらいだろうか。空腹と孤独に襲われながら、ぼんやりと窓の外を眺めていた。
猛吹雪はさらに勢いを増し、窓を強く叩いている。それから私はどうしたのだろう?
確か空腹に耐えかねて、冷蔵庫のショートケーキを口にした。そして……そして、電話がなったのだ。
貴方は、そこで意識を取り戻した。
<sanc1/1d2>
・戸棚
壁掛けの戸棚。探索者の目線の位置にある。
開ける→ティーカップやソーサーといった華奢な物の中に、太めのずっしりとした麻縄が入っている。この可愛らしい空間とは不釣り合いな武骨さだ。異様な雰囲気を放っている。
※【HO3】のみの回想ロール
普段から目にかかることの少ない物であるのにも関わらず、探索者はその麻縄に見覚えがある。やけに印象深く残っている気がする。上手く呼吸ができない。苦しい。ひどく空虚で、漠然とした虚しさに襲われる。
……そうだ、貴方は過去に、その縄から何かを必死に外そうとしていた。
……
気がつけば、そこは貴方がよく知る、家族とともに歳月を過ごした家。蒸し暑い夏の日だった。
貴方の視線の先にはゆらゆらと揺れる大きな塊。車椅子で眠る女。鳴き声一つあげない幼子。貴方を除いた三人は、首にお揃いの縄を身につけていた。貴方は仲間はずれだった。
それから私はどうした?必手を伸ばして、でも、届かなくて。何度も手を伸ばした。皆に早く目覚めてほしかったから。
……
貴方は意識を取り戻した。
<sanc1/1d2>
・電話
壁掛けの電話。探索者の目線より、少し下の位置にある。
探索者が手に取ろうとすると、突如電話が鳴り響く。
【ho1】以外が手に取った場合
ノイズが多く、何を言っているのか全く聞き取れない。音声も途切れ途切れであり、電波がかなり悪そうだ。
【HO1】が手に取った場合
「(HO1の名前)ちゃん(くん)かい?落ち着いて聞けるかな。お母さんが……」
音声はそれ以降途切れ聞こえない。優しく語りかけるような、悲しみを押し殺すような男性の声だった。目の奥が痛い。声が遠退く。一体何を言っている?聞きたくない。
__この電話を受けたのは、一度目ではない。貴方はこの電話の声を知っている。
……
ぐらつく体を必死で支える。再び瞼を持ち上げた貴方の視界には、過ごし慣れた、懐かしい自身の家。貴方の目の前には食べ掛けのショートケーキ。一体誰が口を付けたのだろう。そう謎に思うが、貴方の口の中は甘ったるかった。
テーブル上のメモ→『今年も(探索者名)の好きな苺のショートケーキにしたよ。ケーキに乗せるチョコレートのメッセージプレート買い忘れちゃったので、買ってきます。帰ったらすぐにご飯の支度するからね!』
それから、一体どうしたのだろう。電話が鳴って、私はその電話に出た。知らない男の人の声だった。凄くつらそうで、悲しそうで、ノイズ混じりでもしっかりと聞こえたんだ。母が……。
……
肌寒さで意識を取り戻した。真冬のように寒い。なぜ、こんなに孤独を感じるのだろう。
<sanc1/1d2>
・ピアノ
独りでに鍵盤が動き、ピアノを奏でている。まるで見えない誰かが居るような気がした。
椅子にはガラスで出来た華奢なオルゴールが、か細く音色響かせていた。
【全HO共通】
<アイデア>……オルゴールとピアスの曲に聞き覚えがある。子供が好きそうな可愛らしい部屋で、白衣の老父がピアノを奏でていた。その老父は、いつも優しく、大きな掌で貴方を撫でてくれた。
※弾くことは可能。
・ベッド
一目で柔らかそうだと分かるベッド。毛布の上には、丁寧に畳まれた白衣。また、ベッドに小さな膨らみがある。
・白衣【※全HO共通回想RP】
→ミルクのような優しくて、落ち着く香りがするのにも関わらず、胸の鼓動は強く早く刻まれていく。視界が白く霞むと、一瞬、優しく微笑む老夫の姿が見えた。細く萎びた大きな手で、貴方の頭を撫でていた。
……
視界が弾け、次第に鮮明になると、そこは清潔感を残した子供向けの可愛らしい部屋。心地よいオルゴールがなっている。この音色は、先程のドールハウスと同じものだ。
白衣の老父は、貴方に微笑みかけた。
「幼い君には、酷すぎる現実だ。忘れなさい。心の奥底に隠しなさい。」
老父は目尻をさげて、悲しそうに笑っていた。
……
意識が引き戻される。ここは元のドールハウスだ。今の老父は一体だれなのだろう。
<sanc0/1>
毛布を剥がす→そこには赤茶色の汚れたテディベアが転がっていた。目玉は片方がとれ、手足も解れている。
[赤茶色の汚れ]赤い液体がべったりと付着したのだと思われる。洗っても取れなかったのだろう。
<医学>何年も昔の血液の染みだ。
※【HO2】のみの状態、回想RP
【HO2】はこのテディベアに見覚えがある。これは、貴方の妹が昔両親に貰って以来、大切に持ち続けていたものだ。こんなに汚れているのには違和感がある。どうしてこんなに汚れているのだろう。
__刹那、探索者の脳裏には、赤い血だまりに打ち捨てられたテディベアの映像が流れた。
……
全身を這う不快感に、思わず目をつぶった。重い瞼を開き、そこに広がったのは、一面の赤。床、壁、何もかもが赤い。折り重なる3つの塊は、いつまでも床を赤く塗り広げた。
この塊は何なのだろう。靄がかかって見えないが、人であることはわかる。何故この部分の肉が抉れているのだ?皆一様に、肉が薄く剥ぎ取られている。
そこで貴方は気がつく、貴方の口元は、クリームと、涎と、そして赤い液体で汚れていた。口内には、クリームと思わしき甘味と、生臭い鉄の味が広がっていた。
……
貴方は猛烈な吐き気によって意識を取り戻した。ひたすらに気持ち悪い。
<sanc1/1d2>
条件:自分が食べられないケーキだけを食べた。〈ハッピーエンド〉
※ケーキを食べるのなら、SANを1d3減らす。
※どうぞ合間にRPを挟んでください。ドラマチックにエンディングを迎えましょう。
【HO1】探索者は苺のショートケーキにフォークを突き立て、恐る恐る口に運ぶ。柔らかなスポンジと甘いクリーム。咀嚼を繰り返し、味を噛みしめる。
……探索者はこの味を知っている。何処かで食べたことがある。探索者の心は、あっという間に懐かしさと孤独で満たされた。カチリ、と探索者の記憶に、最後のピースが当てはまった音がした。
……
脳内に堰を切ったように流れ込む懐かしい日の映像。これは探索者自身の記憶。奥底に仕舞い込んで、あなたを守るために隠していた思い出だ。
その日は探索者の7歳の誕生日。確か吹雪で、学校から帰った探索者は、家に母の姿が無いことを珍しく思った。テーブルには置き手紙が置いてあり、目を通せば
『今年は(探索者名)の好きな苺のショートケーキにしたよ。ケーキに乗せるチョコレートのメッセージプレート買い忘れちゃったので、買ってきます。帰ったらすぐにご飯の支度するからね!』
という内容が書かれていた。
……
それから探索者は母の帰りを待ち続けた。だが、どれ程待っても母が帰ってくる気配はない。既に2時間が経とうとしていた。我慢が出来なくなった探索者は、母が作ったショートケーキを口に運ぶ。瑞々しい苺の酸味が寂しさを紛らわせてくれた。一口目を嚥下したところで電話が鳴る。
……
「(探索者名)くん(ちゃん)だね?落ち着いて聞けるかな?お母さんがね、事故にあってしまって、意識がない危険な状態なんだ。今から迎えに行くから、今すぐ病院に向かおう。」
それは無情にも、母の事故と、死を知らせるものであった。視界が色あせて、意識が引き戻される。
__そうだ。私が口にした母の最期の手料理は、私の大好きな苺のショートケーキだった。
<sanc1d2+1/1d6>
探索者の瞬きの回数が減っていき、そして瞼が開かれることは無くなった。オルゴールの音が遠退いていく。
※意識を手放す前に、何か一言どうぞ。
……
甘い香りがする。
目を覚ますと、そこは自室。テーブルに突っ伏して眠ってしまったようだ。ふとテーブルに目をやると、白い小さな箱が置きざりになっている。甘い香りは、どうやらこの箱からしている。
箱を開けると、中にはショートケーキが入っていた。
【cocシナリオ シュガーパズル】 <ハッピーエンド> シナリオクリア
過去の記憶を全て思い出した探索者。トラウマを乗り越え、もしかしたら食べられるようになるかもしれないし、食べられないままかもしれない。
【HO2】
探索者は真っ赤なケーキにフォークを突き刺した。甘く鉄臭い濃密な血の香り。吐き出したくなるような味が広がる。
……探索者は、このケーキの味を知っている。食べたことがことがある。いいや、違う。“食べさせられたのだ”
カチリ、と探索者の記憶に、最後のピースが当てはまった音がした。
……
脳内に堰を切ったように流れ込む懐かしい日の映像。これは探索者自身の記憶。奥底に仕舞い込んで、あなたを守るために隠された思い出だ。
その日は、探索者の7歳の誕生日。やけに1階が騒がしく、気になった探索者は1階へ降りることにした。
扉越しに呼び掛ける。返答が無いことを不思議がりながら扉を開けた。隔たりが取り払われた瞬間、料理の香りに混じって血生臭い臭気が肺に流れ込む。
そして、探索者は見てしまう。食卓や床に覆い被さるように倒れこむ家族の死体を。黒づくめの男は刃物を持っており、その刃先からは血液がこぼれ落ち、血だまりに溶け込んだ。妹のお気に入りのテディベアは赤黒く汚れ、床に打ち捨てられている。
「あ、まだ居たんだ。君もすぐに皆のところに連れてって……。もしかして、君、今日お誕生日だった?……こんな目に合うなんて可哀想。やっぱり殺すのはやめて、俺からとっておきの誕生日プレゼントをあげることにするよ。」
……
家族に近づくと、父、母、妹の皮膚を薄く剥ぎ取った。真っ赤に濡れたケーキを徐に手でつかみ、探索者に微笑みかけると、家族の肉が混じった赤いケーキを貴方の口に押し込んだ。
飲み込まなければ窒息してしまう。食べたくない。噛みたくない。飲み込みたくない。助けて。
そう叫んでも、助けてくれる人は誰もいない。体は酸素を求め、血なまぐさい真っ赤なケーキを胃におさめてしまう。男の影には、頭部の無い太った化け物の姿が見えた。
視界が色あせて、意識が引き戻される。
__そうだ、私は誕生日の夜、家族の肉が入った赤いケーキを食べさせられたのだ。
<sanc1d2+1/1d6>
探索者の瞬きの回数が減っていき、そして瞼が開かれることは無くなった。オルゴールの音が遠退いていく。
※意識を手放す前に、何か一言どうぞ。
何処かで血なまぐさい腐臭がする。
目を覚ますとそこは自室。テーブルに突っ伏して眠ってしまったようだった。
ふとテーブルに目をやると、白い小さな箱が置きざりになっている。この香りは、どうやらこの箱からしているようだ。
箱を開けると、中にはラズベリーソースのケーキが入っていた。
【cocシナリオ シュガーパズル】 <ハッピーエンド> シナリオクリア
過去の記憶を全て思い出した探索者。トラウマを乗り越え、もしかしたら食べられるようになるかもしれないし、食べられないままかもしれない。
【HO3】
溶けかけのチョコレートケーキにフォークを突き刺した。探索者はこの溶けたチョコレートケーキの味を知っている。食べたことがある。咀嚼を繰り返す度に腹は満ちたが、心は虚しくなるばかりだった。カチリ、と探索者の記憶に、最後のピースが当てはまった音がした。
……
脳内に堰を切ったように流れ込む懐かしい日の映像。これは探索者自身の記憶。奥底に仕舞い込んで、あなたを守るために隠された思い出だ。
その日は探索者の7歳の誕生日。父は若年性アルツハイマーを患った母の介護と、まだ幼い弟に手が掛かりっきりだった。貴方は寂しくもあったが、父の多忙さを知っていたからか、手の掛からない子供であり続けた。しかし今日は誕生日である。
……
誕生日ケーキに大好きなチョコレートケーキを買って帰る。帰宅した探索者は家の明かりが無いことに違和感を覚えた。居間から鈍い音が聞こえる。呼び掛けにも反応しない家族。開かれた戸の先のものに、探索者は目を奪われる。右に揺れたり、左にゆれたり、音を鳴らしながら揺れるもの。
それは、父だ。
首の紐へ手を伸ばすが届かない。母と弟も紐を首に巻き付け眠ったまま。朝が来ると父の足元には水溜まりが出来ており、漏らしてしまったのだと探索者は思った。だから恥ずかしくて口を聞いてくれないのだと。その水溜まりには紙切れが落ちていた。
……
「お父さんが宙に浮いているの。みんなお揃いの縄を首につけて眠ったまま。」
と話したことをきっかけに、探索者は家族が一家心中を図ったという事実を知った。
私が良い子ではなかったから、私が手に余る子だったから、父の望む子供じゃなかったから仲間はずれなの?……そうに違いない。実際、父は私の誕生日を忘れていた。
__そうだ、私は誰もいない部屋で、どろどろに溶けたチョコレートケーキを一人で食べたのだ
<sanc1d2+1/1d6>
探索者の瞬きの回数が減っていき、そして瞼が開かれることは無くなった。オルゴールの音が遠退いていく。
※意識を手放す前に、何か一言どうぞ。
何処かで甘い香りがする。
目を覚ますと、そこは自室。テーブルに突っ伏して眠ってしまったようだった。
ふとテーブルに目をやると、白い小さな箱が置きざりになっている。甘い香りは、どうやらこの箱からしているようだ。
箱を開けると、中には溶けかけのチョコレートケーキが入っていた。
【cocシナリオ シュガーパズル】 <ハッピーエンド> シナリオクリア
過去の記憶を全て思い出した探索者。トラウマを乗り越え、もしかしたら食べられるようになるかもしれないし、食べられないままかもしれない。
条件:紅茶を飲んだ。〈トゥルーエンド〉
※他探索者のケーキを食べていれば、この目覚めの前に他探索者の過去の記憶を見ることになる。
湯気のたつ温かな紅茶を口に含み、飲み込んだ。胃に熱いものが落ちた感覚がよく分かる。ほんのりのとした甘さと香りは探索者の眠気を誘った。次第に瞼が落ちていき、緩やかな眠りへ落ちる。探索者の意識は、オルゴールの音と共に遠退いていった。
……
目を覚ますと、そこは自室であった。どうやらテーブルに突っ伏して眠ってしまったようだ。先程のは夢だったのだろうか。夢にしては良くできていて、今も鼻の奥に甘い香りがこびりついている。探索者は、過去の記憶について触れることをしなかった。思い出すことを選ばなかった。記憶を取り戻すことで、再び自身が傷つくことは明白だからだ。思い出すことを放棄した探索者は、何故ケーキが食べられないのか分からない。どういった過程があるのかも知らない。
だが充分だろう。いつも通りの日常が送れさえすれば、それ以上の幸福など無いのだから。
シュガーパズル <トゥルーエンド> クリア
あれはしがない夢だった。貴方は普段の日常に戻る。これで良かった。
条件:ケーキを食べた後、紅茶を飲んで記憶を消した。〈バッドエンド〉
※記憶はハッピーエンドの回想を思い出す。
※生還後、全て忘れてしまうので、他探索者のケーキを食べても描写はない。
泣いた後のように頭痛がする。探索者は全てを思い出した。記憶を無くすまでの過程、ケーキが食べられなくなった理由。
探索者の瞬きの回数が減っていき、そして瞼が開かれることは無くなった。オルゴールの音が遠退いていく。
※意識を手放す前に、何か一言どうぞ。
……
目を覚ますと、そこは自室であった。どうやらテーブルに突っ伏して眠ってしまったようだ。何だか夢をみていたような気もするが、思い出せない。鼻の奥に甘い香りがこびりついているのが不思議だった。探索者は凄惨な過去を知った上で、全て忘れ去ることを選択した。今までは記憶の底にあった思い出であったが、今度こそ完全に消え失せる。もうあの夜の出来事を思い出すことは、二度とないのだ。
同時に、家族との幸せな思い出も、二度と思い出すことはなかった。
【cocシナリオ シュガーパズル】 <バッドエンド> シナリオクリア
嫌な記憶ごと大切な記憶も消失。今の貴方には、一体何が残っているのだろう。
※他探索者の食べられないケーキを食べた場合
クローズドサークル内に居るときは変わりはないが、生還後、目覚める前の夢の中で他探索者の記憶をみることになる。描写はハッピーエンドの内容と同じ。紅茶を飲んでも他人の記憶なため見れる。
後味の悪さとバッドエンドが主食 動画投稿の際は、私の名前の記載をよろしくお願いいたします。 数あるシナリオの中から、遊んで下さった皆様に最大の感謝を!
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