2019年06月20日更新

靴は揃えられた

  • 難易度:★★|
  • 人数:1人~4人|
  • プレイ時間:1時間(ボイスセッション)

7月の半ば。
探索者は、床の固さと服が体に貼りつくような不快感で目を覚ます。
そこは、学校の教室のような場所。
教室の中央にぽつりと立つのは、花瓶が置かれた机。
真っ赤に輝く夕陽に、探索者はどこか寂しげな印象を受けたのだった。
※短時間。ソロでもいけます。
※1/9 マップ画像を加えました

2769

15

ストック

0

コメント

・推奨技能 目星、図書館、聞き耳
・推奨人数 1人~4人
・推定時間 1時間~
  
'画像'
↑手書きマップ
 
【背景】
いじめと虐待を苦に自殺を図った少年、六条 新。
しかし、この状況を面白がったニャルラトホテプによって、死ぬ瞬間に体を乗っ取られ、自殺未遂で終わってしまう。
 
「自分を苦しめたやつらが憎くないか?」
 
という囁きをきっかけに、少年は復讐を始める。
最初はいじめっ子だけに向けられていた憎悪も、傍観していた同級生、見て見ぬふりの教師、……人間全体に向けられていくようになる。
だが、親は殺せなかった。どうしようもなく憎いけれど、いつかは愛してもらえることを信じていた。
 
1日、1週間、1ヶ月、と少年は復讐心を募らせつつも、疲れを感じるようになっていく。
日を追うごとに募る虚無感。
最初は満たされていた心も、いつからか満たされなくなった。
ただ、ニャルラトホテプが楽しむために、支配される日々。頭の中で反芻する怨嗟の声。
窮屈な思いから
 
“あのとき死ねていれば、こんな思いをせずに済んだのに”
 
という思考に変化していく。
 
このような日々を終わらせてくれる人を、少年は待つことにした。
その一人目が、どうやら探索者だったようだ。
 

NPC

六条 新(ろくじょう あらた)
15歳 男 中学生
str11 con6 pow11 dex13 app10 siz15 edu9
ニャルに乗っ取られた少年。自我は残して支配されていたため、時折自由に行動することもできた。自殺ができないよう呪われており、支配から逃れられる日を待ち望んでいた。
 

【導入】

7月の半ば。
床の固さと服が体に貼りつくような不快感で目を覚ます。体を起こし、周りを見渡せば、ここが学校の教室であることがわかる。
(多人数の場合は、周囲を見渡したときに、自分以外にも人がいることに気が付く)
電気はついておらず、薄暗い教室に夕陽が差し込み、探索者を照らしている。
床には中央に花瓶の置かれた机が1つ。それ以外の机は足が折れていたり、粉々になっていたりと、無造作に散らばっている。
※RPを開始してください。
 
・電気
スイッチを押すと、蛍光灯が灯る。
薄暗い教室が明るくなった。
 
・花瓶
萎れた黄色の花が活けられている。花瓶に水は入っていない。
微かに甘い香りがする。
[知識・博物学 -30]
この花の名前はチグリジアであることがわかる。
[知識-40]
花言葉は”私を愛して””私を助けて”であることを探索者は知っていた。
 
無造作に散らばる机
折れて尖った木が剥き出しになっており、注意して触らないと怪我をしそうだ。
[目星]
重なる机に埋もれるようにして、本があるのを見つける。
(DEX*3に成功で取れる。失敗で木片で怪我をするが取れる。HP-1)
 
本→かなり分厚い植物図鑑だ。花言葉までかかれている。全ページフルカラーで、かなり長い間使われているが、大切にされていたのだろう、本はほとんど傷んでいない。
[目星]
掠れているが、裏表紙の下に字が書かれている。
[母国語-20]
六条 新(ろくじょう あらた)と書かれている。
 
[図書館]
本を捲っていると、折れ曲がった付箋がついているページを見つける。
 
読む→花名:チグリジア アヤメ科トラユリ属に分類される球根植物。
開花時期は6月から8月、花色は赤を基本とし、オレンジ、ピンク、黄色、白などがある。
大きく、美しい花だが、この花は短命である。一日花と言い、朝に開くと午後にはしぼんでしまい、たった一日の間しか開花しない。
花言葉:私を愛して、私を助けて、鮮やかな場面、誇らしく思う
 

右にガラス窓が付いた引き戸が1つ、そして緑色の大きなボードが壁に埋め込まれている。
右の引き戸→紙が貼られている。『結末を迎えるのなら、この戸をくぐれば良い。』
鍵は掛かっていない。
[聞き耳]風が吹く音が聞こえる。屋外に繋がっているのかもしれない。
 
ガラス窓→真っ暗で、少しの光すら見えない。
 
[目星]
戸の近くに紙切れが落ちている。
読む→『僕の宝物の本、誰かに隠されて、無くなっちゃった。
両親から貰えた、唯一の物だったのに。』
※ゴミ箱から見つけたメモと同じ筆跡である。
 
ボード→新聞のスクラップが画鋲で留められている。
読む→内容は、ここ数ヶ月間多発している行方不明事件についてだった。
××中学校に在籍する生徒、教師などが日ごとに姿を消しているというものだ。
だが、最近は学校に在籍するものが全員姿を消した後は、住んでいる地域が全く違う所の人間が消えたりと、もはや無差別になりつつある。
[アイデア]
探索者はこの事件を聞いたことがあった。
また、この行方不明事件で、一番最初に姿を消したのは3年A組の六条 新(ろくじょう あらた)であることを知っていた。
 

鍵付きの窓がある。眩しすぎる夕陽が探索者を照らす。
鍵を開けようとしても、異常に固く、開けることができない。
※壊すことも不可能
[目星]
窓の外を眺めていると、突如夕陽が遮られる。
暗くなった視界に広がったのは、真っ逆さまに落下する少年。
死人のような表情の少年は、確実に探索者を見つめていた。
少年は重力に従って落ちて行き、底の見えない闇へと沈んでいった。
Sanc1/1d3
 

西

黒板、教卓、スピーカー、時計、ゴミ箱など、普通の教室にあるものが置かれている。
黒板→チョークで文字が書かれている。
『どうすることが、彼を救うことに繋がると思う?
殺すのか、自殺を許すのか……それとも、生きるべきだと叫ぶのか。』
[アイデア]
※ゴミ箱から少年が書いたメモ紙を見ていた場合
黒板に書かれている字とゴミ箱で見た字は筆跡が違うと気づく。
 
教卓→教卓の上には、生徒名簿と思われる黒いファイルが数冊置かれていた。
3年A組、生徒40名、担当教師4名。3年B組……1年、2年……。
六条 新(ろくじょう あらた)と書かれた名前の欄を除き、全ての名前に赤色の横線が引かれている。
 
スピーカー
ノイズがなっている。
低く唸るような音は、呻き声にも聞こえる。
 
時計
4時30分を指している。
時計の針は1mmも動かず、止まったままだ。
 
ゴミ箱
丸められた紙屑が1つある。
開く→「疲れてしまった。僕はもう復讐なんてしたくない。
何度屋上から飛び降りても、気が付くと、もとの場所へ戻っている。死ぬことができない。なんてひどい呪いだ。
死ぬことを誰かに許してもらうか、殺してもらえないと、僕はいつまでも死ねないのか……。」
 

白い壁に大きく文字が書かれている。
読む→『希望を知るから絶望するのだ。
それなら最初から、夢なんて見なければ良い。』
[アイデア]
※黒板の文字を見ていた場合、同じ筆跡だとわかる。
 

エンディングへ向かう

・戸をくぐった
ガラス越しに見えたのは闇だったが、戸を開けると、夏の香りがする突風、そして目を開けてはいられないような眩しさに襲われた。
再び瞼を上げれば、そこに広がるのはオレンジ色に染まった、寂しげな屋上。
そして、綺麗に揃えられたローファーがある。
一切フェンスが無い屋上のふちには、学ランを見に纏い、こちらに背を向ける少年がいた。
 
声を掛ける→少年は声を掛けられると、頭髪を風になびかせながら、ゆっくりと振り返る。少年の背後には、どす黒い影がまとわりつくように蠢き、不定形モヤが異様な存在感を放っていた。
 
「待ってました」
 
少年の口許が、愉しそうに歪む。
 

エンディング分岐

・条件 少年を殺した
風にあおられながら、静かに微笑む少年は無抵抗だ。少年を軽く押すと、支えを失った体はいとも簡単に宙へ放り出される。
 
少年は探索者を見つめ、唇を微かに動かす。少年の口角は、僅かにつり上がっていた。
 
「__人殺し」
 
少年の背後でうねる不定形なモヤが消え、少年の体は重力に従って、闇の奥底へと音もなく落下する。
これから死ぬというのに、何故か少年は満足げで、穏やかで、先程とはまるで別人のような、実に人間らしい表情をしていた。
 
まるで、『僕と一緒だ』とでも言いたげな、「人殺し」という言葉は、探索者の耳の奥にこびりつき、絶えず繰り返す。
復讐心から人殺しを始めた少年を、探索者は自身の手で殺した。
 
だが、探索者はどうしようもなく醜い復讐の連鎖を断ち切った。これは紛れもない事実だ。
 
__同時に、晴れて人殺しとなってしまった探索者自身の手が、二度と取り去ることができない汚れにまみれたことも、紛れもない事実なのだ。
 
その後、猛烈な眠気に襲われた探索者は、意識を手放す。
再び意識を取り戻すと、そこは何度も見慣れた自室。
夢だったのだろうか、とも思うが、探索者の手は、少年を押したときの感触、温度、制服の手触りが、気持ち悪いほど鮮明に覚えていた。
【ハッピーエンド(メリーバッドエンド?)】
報酬 san回復1d10
少年に植物図鑑を渡した san回復1d3
 
・条件 少年に自殺を促した
にたにたと不気味に笑う少年の背後には、黒い不定形なモヤが蠢いている。
探索者が自殺を仄めかす言葉を発すると、その黒いモヤは色が薄まり、やがて空気に溶け込むようにして消えてしまう。
少年は先程とは変わって、不気味な笑みではなく、少し影のあるような、悲しげな笑みで、探索者を見つめていた。
 
夕陽で赤く染まる少年は、口を開く。
 
「__やっと死ねると思うと、僕は幸せだよ。」
 
探索者と目を合わせながら、少年は一歩、後ろへ下がる。その動作は、真っ逆さまに落ちていくことを表していた。
少年の体が、ぐらりと傾く。
突風が吹き、前髪の隙間から覗かせた少年の瞳は、涙で濡れている。
ひどくゆっくりに見えたその一連の様子と、心の底から幸せそうに笑う少年から、探索者は最後まで目を離すことができなかった。
 
暗闇の奥底へ飲み込まれるようにして少年は、その短すぎる生涯を終える。あまりにも呆気なさすぎる生涯だ。
夕陽は、少年の揃えられた靴と取り残された探索者を照らし続けた。
 
その後、猛烈な眠気に襲われた探索者は、意識を手放す。
再び意識を取り戻すと、そこは何度も見慣れた自室であった。
夢だったのか?と目を瞑れば、細部まで鮮明に思い出すことができる少年の最期。
ふと窓を見やれば、あの時と同じ真っ赤な夕陽が差し込んでおり、あまりの眩しさに探索者は目を細めた。
【トゥルーエンド】
報酬san回復1d6
少年に植物図鑑を渡した san回復 1d3
 
・条件 少年に「生きろ」などと説得した
少年の背後には、くすんだ色をしたモヤが蠢いており、少年は不気味に口角を吊り上げている。
探索者は少年に希望を持つよう、この絶望から少年を救いだすべく、懸命に声をかける。
いつのまにか、不定形なくすんだモヤと少年の不気味な笑みは消えていた。
 
少年は探索者に問いかける。
 
「__僕は人殺しだ。意味もなく命を奪って、殺して、蹂躙したほうが多い。
現実の世界では、誰も僕を求めてくれない。必要とされていない。居場所がないんだ。
……それでも、もう一度やり直せるって、生きるべきだって、あなたは言うの?」
 
探索者の返答を聞き届けた少年は、年相応の笑みを浮かべると、風に吹かれ、崩れるように消えていった。
 
その後、猛烈な眠気に襲われた探索者は、意識を手放す。
再び意識を取り戻すと、そこは何度も見慣れた自室だ。
点けた覚えのないテレビが、喧しくニュースを報道している。
ふと目をやると、そこに写る少年に、探索者は見覚えがあった。思わず、音量を上げる。
 
「××中学校行方不明事件に巻き込まれていたと思われる少年が、今日の夕方、突如現れ、家で遺書を残したあと、自室で首を吊り、自殺を図ったようです。
遺書も公開されています。
 
『今日出会った人に諭されました。
生きるなんて、もう嫌だ。疲れた。と思っていたけれど、その人は懸命に声をかけてくれて、初めて生きてみるのも悪くないかなと思えました。
存在を肯定してもらえたように感じたんです。
 
でも、無駄だった。駄目だった。所詮、気がしたに過ぎませんでした。
家に帰ったところで、色がまばらな汚い痣が増えていくばかり。
一般的な家庭のように、温かな食事が待っていることもありません。
一人でいると、学校での嫌な記憶を思い出してしまいます。
さっきも、居なくなった僕を心配してくれるかなと思いましたが、顔を見るなり殴られてしまったので、口のなかが鉄の味でいっぱいです。
 
やりなおそうにも、学校のみんなは僕が殺してしまいました。
関係のない人を拐って、殺し続けたのも僕です。
僕は笑えないのに、あの人たちは楽しそうに笑ってる。それがどうしようもなく、憎くて、痛くて、悲しくて、羨ましかった。
 
生きることが窮屈です。
生きなきゃいけない、生きるべきだ、死んではならない、諦めるな、という言葉の羅列で呼吸ができません。皆口を揃えて馬鹿みたいにこう言いますが、本当にこの言葉が正しいのでしょうか。
 
希望を持って絶望してしまうくらいなら、最初から希望を知りたくなかった。教えてほしくなんかなかったです。
 
贅沢かもしれません。でも、もし生まれ変わることが許されるのなら、食卓を家族で囲める程度の、温かい家庭に生まれてみたい。
 
一度目は自殺も人生も失敗してしまったけれど、次は成功するといいな。』
警察は少年と事件の関係を探り、また、少年は劣悪な家庭環境に置かれ、いじめなどがあったのではないか、ということを調べていくようです。……」
 
ニュースキャスターの声が遠退いていく。
掠れた血が付着する遺書を見て、探索者は理解した。自分自身が発した言葉がきっかけで、少年の命を奪ってしまったことに。
少年にとって希望となる筈だった言葉が、自殺という形の最悪な結末に繋がってしまった。
 
__あのとき確かに、少年は生きようとしたのに。
 
と、探索者はテレビの前で一人、呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
【バッドエンド】
報酬san回復 1d3
少年に植物図鑑を渡した san回復 1d3
後遺症:自分の言葉のせいで、少年を自殺に追いやってしまった。という気持ちから、極度な人間不信を発症。人との会話を避けがちになり、いままで好意的だった人間など、全てを含め、信じることが出来なくなる。どこにも頼れる人がいない、という不安状態から1ヶ月毎にsanc1d2/1d3が発生。
※精神病院にかかることで、この後遺症は取り除くことができる。病院にかかっている場合、sancは発生しない。
※入院期間は2d6か月。その期間中は、この探索者を使用することは出来ない。
 
【解説】
少年はこの支配から解放されることを望んでいる。
だが、自殺では死ねないようニャルに呪われているため、”殺してもらう”という方法と、”第3者から自殺を仄めかす言葉を発してもらうことで、支配から逃げる”の2通りしかない。
説得は、最初は希望を持つことができるが、現実に戻ったとき、やはり自身の居場所は無いということを再確認させられる。
希望を持ったあと、絶望を叩きつけられ、ついに正気じゃいられなくなった少年は自殺を図ってしまう。
だが、"生きても良い"と言って貰えたその瞬間、少年は今までの人生で、一番幸せなときだった筈だ。
 
トゥルーエンドのモヤが消える様子は、ニャルの自殺阻止ループの支配から解放されたことを表している。死んだら面白くなくなる、という理由でニャルは呪いをつけた。
バッドエンドのモヤが消える様子は、探索者の口から発せられる説得の数々を、聞いていられなくなったニャルが何処かに消えただけ。邪神に人間の気持ちは一生わからない。
バッドエンドの自殺は、少年の意思で行うので、ニャルはあまり関係ない。(事の発端はニャルだが)
クローズドサークルから出てしまえば、ニャルの呪いも解けてしまう。=自殺できるようになる。
 
【あとがき】
国語の授業で創作作業があったので、軽い気持ちでシナリオを書き始めたら、案の定暗い話になりました。最近意図せずとも、全て物語がバッドになっていく気がする。
大丈夫なのか……?これ提出できるのか……?もっと明るくて、短いシナリオを書く予定だったのに……。内容が重くて先生にドン引かれそうですね。
一応、投稿用と提出用でシナリオ名だけ変えておこう……。(素性がバレたら怖いからね!)
 
……というか、これどうやって評価するのだろう。先生、TRPGプレイヤーとかではないでしょうし。友人にテストプレイしてもらった感想や改善点を書いてもらった紙と一緒に提出すればいいのかしら。
 
……まぁ、そんな話はどうでもよいのです。
テストプレイの結果は、第1弾がバッドエンド。取り憑かれたように「なんで……」とつぶやく友人が印象的でした。本当に優しいですね。みなさん。
第2弾はトゥルーエンドで結末を迎えました。ソロにも関わらずさくさくで良いRPでした。
 
次はハッピーらしいエンディングが書けると良いなと思っています。
何か疑問点などありましたら、お気軽にご連絡下さい。
【靴は揃えられた】を閲覧、プレイ、ありがとうございました。

09cc5f48 18d8 4294 931f 97681bd5e996

時々シナリオ投稿してます。みむりです。 後味の悪さとバッドエンドが主食。 プレイ、閲覧してくださった皆様に感謝。 何か質問などあればお気軽にどうぞ。 動画化など大歓迎です。私の名前を表示して頂ければ問題ありません。一言頂くと嬉々として見に行きますので、是非声をかけてください。 Twitterアカウントはこちら。→@amasuba200

Post Comment

ログインするとコメントできます。