2024年07月30日更新

脳に巣食う者

  • 難易度:|
  • 人数:3人~3人|
  • プレイ時間:3~4時間(ボイスセッション)

【あらすじ】
 “宿泊客が行方不明になる“という妙な噂がある旅館を中心に、物語は動き始める。それぞれのやるべき事を胸に抱え、探索者は真冬の寒さに抗いながら歩きだした。
 PL1あなたの目標は、この旅館の真実にたどり着き、記事を書くことだ。
 PL2あなたの目標は、友人の異変の原因を取り去ることだ。
 PL3あなたの目標は、消えた友人を探すことだ。
【推奨】目星、聞き耳
2/5修正 2/6修正

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ストック

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コメント

脳に巣食う者

      __偽り、誤魔化し、欺瞞。
 
・形式 シティー
・推奨技能 目星、聞き耳
・推奨人数 3名
・推定時間 3時間~
 
KPへ
 このシナリオは後味が悪いです。その旨をPLに説明し、了承を得てから行いましょう。
 またHOはダイスを振ったりして決めると良いと思います。ご自由に。

【MAP】

※中庭のMAPは御座いません。
1F
'画像'
 
2F
'画像'
 

【あらすじ】

 “宿泊客が行方不明になる“という妙な噂がある旅館を中心に、物語は動き始める。それぞれのやるべき事を胸に抱え、探索者は真冬の寒さに抗いながら歩きだした。
[PL1]あなたの目標は、この旅館の真実にたどり着き、記事を書くことだ。
[PL2]あなたの目標は、友人の異変の原因を取り去ることだ。
[PL3]あなたの目標は、消えた友人を探すことだ。
 
[HO1]PC1用
 あなたはジャーナリストだ。人が消えてしまうことで有名な、この旅館の真実にたどり着き、記事を書くことが目標。
※このHOは他プレイヤーに公開しても問題ない。
 
[HO2]PC2用
 あなたは旅館を経営する主人<鬼灯 乙寧>の旧くからの友人(または恋人)だ。だが、その友人(恋人)の様子が最近おかしい事に気がついた。その原因を取り去ることが目標。
※このHOは他プレイヤーに公開しても問題ない。
 
[HO3]PC3用
 あなたは医者だ。そして友人の<杉久 零士>を探している。彼は旅館ほおづきに泊まってから姿を消し2週間も経つ。あなたの目標は、その友人を見つけることだ。
※このHOは他プレイヤーに公開しても問題ない
推奨技能 <信用><精神分析>
 
※探索者たちは、全員顔見知り程度の知人だ。
 

【探索者が既に知っている情報】

※KPはこの情報を探索者に公開する
 美しい景色に温泉、そして旬の食材を使った美味しい食事を楽しむことができると有名な旅館”ほおずき”
 しかし不運にも、旅館を経営していた夫婦、“鬼灯 晃生”と“鬼灯 夏乃子”が交通事故で亡くなる。18歳になる、たった一人の娘を残して……。
 
 1年ほど経ったころ、ほおずきにまつわる妙な噂が蔓延るようになった。それは、宿泊客が一人、また一人と姿を消してしまうというものだ。
 警察も出動する大きな事件にまで発展したが、結局何も見つからず、これを面白がった客が増えただけだった。
 今もこの不可解な現象は続いているが、人気は衰えず、客足が絶えている……ということはないようだ。
 
【NPC】
鬼灯 乙寧(ほおづき おとね)18歳 女
 鬼灯夫婦のやっとの思いで授かった最愛の子供。両親の愛を一心に浴び育つ。
 しかし、両親が事故で亡くなったため、18歳という若さで旅館の主人の座を継いだ。
 その後、シャッガイに寄生され、生け贄集めに利用される。次第に記憶が混濁。最終的にはアザトースを崇拝している。という記憶まで植え付けられる。
str7 con7 pow10 dex12 app16 siz14 int17 edu12 
1日目san50(40)→45 2日目san45→41 3日目san41→31
3日目HP 11→5
 
鬼灯 晃生 (ほおづき あきお) 45歳 男
 植物が好き。実に温厚で、妻と娘のことを愛しており、従業員たちにも慕われていた。一年前、交通事故に遭い、妻と共に死亡。
 
鬼灯 夏乃子 (ほおづき かのこ) 44歳 女
 好きなものに没頭しすぎる夫に呆れながらも、尊敬し、愛していた。娘は何よりも宝物。また、幼少期から足が悪く、車椅子生活であった。一年前、交通事故に遭い、夫と共に死亡。
 
杉久 零士(すぎひさ れいし) 28歳 男
 [PC3]の友人。オカルトマニア。好奇心が旺盛で、話題になっているこの旅館へ訪れた所、生贄として選ばれてしまい、地下へ監禁されていた。
Str7 con8 pow12 dex9 app12 siz13 int15 edu16
HP11→6 san60(48)→21
 
※KPへ
 杉久は毎晩シャッガイに拷問を受け、心身ともにぼろぼろになっている。そこで、1日の終わりにPC3と杉久の幸運を振り、どちらも成功なら杉久のsanを−3とHP−1、片方が失敗したらHP−2とsan−5、両方失敗したらHP−3とsan−7
最終日、彼はどのような姿で探索者と再会を果たすのか。
※このロールの意図はPLに隠して行う。
 
シャッガイからの昆虫 ルルブp179
Str2 con1 siz1 int20 pow16 dex29
 
【導入】
 地面には雪が降り積もり、吐息が白く曇る1月。探索者の元に、白い封筒が届く。
 そこには、探索者の名前と<旅館 ほおずき 鬼灯 乙寧>という文字。封を切り、中を読むと
『おめでとうございます。(探索者の名前)様は厳正なる抽選の結果、3名様に当たる2泊3日の当旅館宿泊チケットに当選いたしました。2週間後の1月×日、ほおずきでお待ちしております。』
 このチケットと手紙を見た探索者は、自身がとある目的から、この懸賞に応募していたことを思い出す。まさか当たるとは思わなかったが、運がよかったのだろう。探索者は2週間後に向けて、荷物をまとめるのであった。
 
 2週間後の宿泊日当日。時刻は16時頃。探索者たちは今、旅館の入り口前にいる。既に薄暗くなりつつある屋外に、旅館の温かで淡い光が灯り幻想的だ。
※全員集合
※(pc3)は<写真術>をどうぞ。これから先、<写真術>を振りたければ、宣言後ダイスロールをどうぞ。
 

【チェックイン 1日目】

中へ→探索者が中へ入ると、フロントでは、着物を着た30代くらいの女性が笑顔で迎えてくれる。
 
「本日は当旅館へお越しいただき、誠にありがとうございます。どうぞごゆっくりお寛ぎくださいませ。
朝食は8時、昼食は12時、夕食は19時頃、お部屋に運ばせて頂きます。アレルギーなどはありませんか?
 
また、露天風呂は午前6時から午後0時まで開放しております。ご自由にお使いください。」
 そう言って、部屋番号が掘られたキーホルダー付きの鍵を渡してくれる。
※PC2が鍵をうけとるとき、フロントの女性が「乙寧お嬢様が、(PC2)様が来ることを、とても楽しみにしていましたよ。」
と微笑む。
 
チェックイン→PC1 1号室(金木犀の間)、PC2 2号室(桔梗の間)、PC3 3号室(朝顔の間)
※チェックインの順番は誰からでも構わない。
※ちなみに金木犀の花言葉は真実、桔梗の花言葉は永遠の愛、朝顔の花言葉は固い絆である。
 
フロントの女性と会話
名前は?→「大宮 紗良(おおみや さら)と申します。」
今日の宿泊客は何人くらい?→「ありがたいことに、全お部屋満室となっています。」
 
【PC2イベント】
 PC2がチェックインを終えると、(PC2)!と声をかけられる。
 振り向くと、そこにはこの旅館の主人である鬼灯乙寧が、人懐っこそうな笑みを浮かべて、探索者を歓迎する。
<目星>
  乙寧の目の下には隈が出来ている。以前よりも少し痩せたようにも見える。
※乙寧に聞くと「最近あまり眠れてなくて……。大丈夫。薬飲んでるから。心配させてごめんね。」
 少し会話をした後、「存分に楽しんでいってね。」と言い残し、去っていく。
※他にも探索者がいれば、会釈して去っていく。
 
【部屋の描写】
 畳のよい香りがする。10畳ほどの広さがあり、窓からはぼんやりと夜景が見えている。今はもう夜になってしまい、景色はよく見えないが、明るければきっと美しい雪景色を見ることができるだろう。
 室内にはテレビ、金庫、冷蔵庫、トイレ、洗面所、風呂、押し入れなどがある。
※どの部屋も置いてあるものは同じ
 
 テーブルの上にはパンフレットのような物と、電気ケトル、急須、湯飲み、茶葉、そして茶菓子が置かれている。
 
パンフレット
ルームサービスや旅館のマップが書かれたものだ。
※map開示
 

【館内探索】

 現在の時刻は16時30分。調べることが出来そうなのは、①職員への聞き込み、②旅館と鬼灯家を繋ぐ渡り廊下、③PC3の友人、杉久暁一について。
 
・職員への聞き込み<幸運>
 旅館内で歩いている壮年の男性従業員をみつける。
<目星>
「支配人 藤堂 誠」と書かれている。
 
亡くなった夫婦について→
 「旦那様と奥さまはとても素敵な方々でした。互いを尊敬しあっていましたし、娘の乙寧お嬢様のことも、心から愛していました。
 私たち従業員にも優しかったです。本当に素晴らしい方々でした。交通事故で亡くなられてからもう1年ですか……。本当に残念でならないです。」といって、悲しそうな顔をする。
<心理学>この言葉に嘘はないと感じる。
 
鬼灯 乙寧について→
 「お嬢様だって辛い筈なのに、私たち従業員は泣いている姿を見たことがありません。いつも明るく、旦那様と奥さまが遺したこの旅館の経営を頑張っております。とてもお強い方です。
 私たちもお嬢様を支えられるよう、努力していこうと思っております。」
<心理学>従業員に慕われていたのだと感じる。
 
噂について→
 「嘘だと思いたいのですが、忽然と姿を消してしまうんです。昨日まで、本当に普通に過ごしていた筈なのに。実はお客様だけではなく、従業員も数名行方不明でして……。
 一体何処へ消えてしまったのでしょうか。警察の方に協力して貰いましたが、結局なにも分からず仕舞いで……。」
 
・渡り廊下
 照明に照らされるようにして、立派な庭が広がっていた。積もった雪に照明の光が反射して輝いている。21時までは、この渡り廊下へ行くことができるようだ。
 渡り廊下をずっと進んでいくと、すりガラスの扉がある。
 
すりガラスの扉
 鍵がかかっているため、入れない。
<目星>-20
家の用な建物がみえる。
※鬼灯家
 
・いなくなった友人、杉久について
<アイデア>
 フロントにいけば、杉久の荷物や話が聞けるのではないかと思う。
 
 フロントでは、先程の女性がパソコンで仕事をしている。探索者の存在に気づいた女性は微笑んで声を掛けてくる。
「(PC3)様、どうかなさいましたか?」
 
杉久について→
 「確か、今日から2週間前に宿泊して、行方が知れなくなったお客様ですね。存じております。」
 
杉久の荷物を見せて欲しい→「杉久様のお荷物は預かっておりますが、他のお客様に勝手にみせることはできません。申し訳ございません。」
※杉久との友人関係が明らかにわかるものを提示できれば、荷物をもらえる。
 
成功→「ご友人でしたか。失礼いたしました。では、杉久様の荷物を持ってくるよう手配しておきます。行方不明者の方の荷物が多いため、荷物の引き渡しは明日になってしまうと思いますが、よろしいですか?」
※すべての探索が終わると、時刻は18時頃になっている。
 
露天風呂
人はいない。1月ということもあり、岩は雪に覆われている。空気は澄み切っており、夜空を見上げると、星空がどこまでも続いているのが見える。いつも明るい都会では、あまり目にすることが出来ない風景に、探索者は感動する。
 
【19時】
 探索者の元には料理が運ばれる。1品1品美しく盛られた食事に舌鼓をうち、探索者の腹は満たされたのであった。
※それぞれRPを行ってもらい、就寝。
※PC3と杉久の幸運ロール
どちらも成功なら杉久のsanを−3とHP−1、片方が失敗したらHP−2とsan−5、両方失敗したらHP−3とsan−7
 
【深夜】
POW*5に成功で目覚める。
<聞き耳>
 すこし遠い所から、羽音のような音が聞こえる。ただ、普通の虫ではあり得ないような、重厚で金属質な音。ひたすらに不気味だった。<sanc0/1>
また、ぺたぺたと廊下を歩く足音が聞こえる。
・時間を確認する→午前2時
 
廊下を覗いた場合
 廊下を覚束ない足取りで歩く、着物を着た少女の背が見えた。足は裸足で、寒いのか真っ赤になっている。ふらふらと一体何処へいこうとしているのか。
 
近づく
 近づいてみると、それは鬼灯 乙寧であった。目は焦点が合っておらず、何処か遠くをぼおっと眺めている。声を掛けると、はっとした表情になり、次第に焦点もあう。
<目星>クリティカルのみ
乙寧の側をよぎった黒い影のようなものを一瞬みた。
 
・声をかけたのが、PC2以外だった場合
「私、また……。お休みの所、申し訳ありません。」
 そう言い残し、小走りで渡り廊下の方へ向かってしまう。
 
・声をかけたのが、PC2だった場合
「(PC2)……。私ったら、また……。最近、気がつくと、いつも知らないところにいたりするの。昼間はそんな事ないんだけど。寝てたのに、起こしてごめんね。おやすみなさい。」
 
 申し訳なさそうな顔をして、乙寧は家に繋がる渡り廊下へ向かう。
 

【2日目】

  身支度を終え、朝食を食べた探索者は、自らの目的を果たすため、探索に行く。廊下に出ると、乙寧とすれ違う。
 
「おはようございます。」
 
と笑い掛ける乙寧は力なく、やつれていた。
 
<聞き耳>
 探索者のそばを横切った乙寧からは、鉄のような香りがした。
 
<目星>
 着物の袖から見えた、華奢な腕には包帯が巻かれていたのを見逃さなかった。また、その包帯には薄く血のようなものが滲んでいた。
〔話しかける〕→「あぁ、昨夜転んで怪我をしてしまいまして。ご心配をお掛けして、申し訳ありません。」
 
<アイデア>
 昨日は包帯を付けていなかったことを思い出す。
 
【探索可能場所】
① 前日信用を得れていれば、杉久の荷物のチェック、②鬼灯家の探索
 
・杉久の荷物
 フロントに行くと、昨日の女性が「おはようございます。昨日頼まれた杉久様の荷物です。」
と彼がよく使っていた鞄を渡してくれる。
 

 長期間宿泊する予定はなかったのだろう。荷物や着替えは最小限だ。鞄の中から異様に古びた本と、皮の手帳が見つかる。
 

 埃っぽく、表紙も黄ばんでいる。ページを捲ると、ぶわりと埃が舞い、探索者は思わず咳き込む。
読む→中には、見たこともないような珍妙でおぞましい生き物が描かれており、探索者は理解することができなかった。いいや、理解したくない。理解するべきではない。
これ以上中を読みたくないと思っても、ページを捲る手は止められず、気がつくと、印がつけられているページで手が止まった。<sanc0/1d2>
 
“シャッガイからの昆虫” (ルルブ6版 p179)
“アザトース”(ルルブ6版 p204)
※KPは探索者に上記の生物について説明する。
 
手帳
 『×月×日
 オカルトマニアの俺にとって、旅館ほおずきは好奇心をそそられて、仕方なかった。宿泊客が行方不明になるだなんて、恐ろしいこともあったもんだ。』
 
『×月×日
 俺は、この事件は神性が絡んでいるのではないかと思っている。その中でも、このシャッガイからの昆虫ではないだろうか?俺の勘は外れたことないんだ。きっとそうに違いない。
 一瞬ではあったが、俺は旅館の主人、鬼灯 乙寧の耳から出入りする生物を見た。このような習性を持つのは、やはりシャッガイとしか考えられない。
 シャッガイが関わってくるとなると……やつらの願いはアザトースへの生け贄集めか?
 しかし、今日はもう夜も更けた。明日の昼、追い出す呪文を唱え、彼女の気が狂ってしまう前に救おう。』
 
 日記はここで終わっている。次のページには、[脳に巣食う妖虫 駆逐]という呪文が書かれていた。ルルブ6版 p259(シャンを追い出す)
※杉久が日本語で書き記していたので、1日で習得することができる。また、習得する場合は<2d3>san値を減らす。
 
#鬼灯家 探索
 中庭に行くと、空が曇っていることと、雪が降っていることがわかる。
 すりガラスの扉には、鍵はかかっていなかった。その先には、玄関の扉が見えている。
 
鬼灯家 玄関
 立派な松が二階建ての家の周りを囲むようにして生えている。玄関の周りには、プランターが置いてあり、花が咲いている。
 
<目星>
 玄関周辺を調べていると、プランターの下から鍵が見つかる。
 
玄関
 鍵がかかっている。
※プランター下の鍵で解錠
 
プランター
 雪が積もっている。
 
【家の中へ】
 誰もいない。掃除は行き届いているが、使用感がない。静かすぎるせいで、少しばかり不気味だ。
 
乙寧の部屋
 室内はカーテンで締め切られ、日光が遮断されているため、暗い。テーブル、ベッド、机、クローゼット、壁にはボードがある。
 
照明
 壁についているスイッチを押せば、問題なく電気がつく。
 
テーブル
 血に濡れたカッターナイフと長方形の白い紙袋がある。
・カッターナイフ
すっかり血は乾いており、パラパラと固まった血液がテーブルに落ちた。
・紙袋
それは最寄りの病院からのもので、中を見ると入っていたのは睡眠薬だ。
 
ベッド
 救急セットが置いてある。
 

 机の上にはクリアファイルがある。引きだしは一つだけあり、3センチほど開いている。
 
・クリアファイル→
 他の旅館のパンフレットと、従業員名簿が入っている。
 
引きだし→中には黒いファイルとノートがある。
・黒いファイル→
 中を読むと、それは帳簿であることがわかる。経営状況は全く悪くなく、むしろここ最近飛躍的に良くなったことが分かる。
 
・ノート→日記だ。
『×月×日
 大好きだったパパとママ。どうして私を置いていったの?毎日一人で泣いてばかり。でも、旅館は私が守らなくちゃいけない。弱い姿を見せて、皆を心配させる訳にはいかない。』
 
『×月×日
 今日はパパとママのお墓参り。私のことも早く、そっちへ連れてって。』
 
『×月×日
 夜になると、夢遊病みたいに歩き回ってる。疲れているのかな。』
 
『×月×日
 体に知らない傷ができてる。今日は足に沢山切りつけた痕があった。シーツもパジャマも血で汚れて、すごく痛い。
 どうして私が、血で汚れたカッターを握っているの……?
 パパ、ママ、ごめんなさい。二人からもらった大切な体を傷つけるような真似をして。』
 
『×月×日
 眠る度に悪夢をみる。夢の筈なのに、すごく鮮明で、匂いまで感じ取れる。お薬、ちゃんと飲んでるんだけど。』
 
『×月×日
 パパ、ママ、怖い。助けて。記憶が曖昧で、時々、パパとママの顔が、名前が、声が思い出せないの。私、二人のこと大好きなのに。』
 日記はここで終わっている。
 
クローゼット
 可愛らしい洋服が沢山詰められている。そしてこの部屋には不釣り合いな拳銃が一丁、仕舞われていた。
拳銃→2発ほど撃てそうだ。
 
<知識-20><拳銃>
充分過ぎるほどに、人を殺傷できる口径だ。(ルルブp70)
※生贄の一人が持っていたものを拾ってきた
 
ボード
 一際目を引く写真がある。その背景は満開に咲く白い梅の木だ。車椅子の女性と笑顔の男性の間に乙寧がいるという写真である。
 他にも写真があり、1番新しいものは1年前の事故に遭う前の物であることがわかる。どの写真も、幸せを凝縮したようなものだった。
 
夫婦の部屋
 時が止まっている、というような表現が当てはまっていた。最低限の掃除はされているが、一年前の事故に遭った日のままになっているような気がした。
 小さな木製の棚には分厚い冊子が数冊と茶色の小瓶があり。壁にはドライフラワーが飾られている。クローゼットには、うっすらと埃が積もり。寝具の側には、車イスが置かれている。
 

 茶色の小瓶と数冊の冊子。
・冊子→中を見ると、アルバムであることがわかる。乙寧が産まれてから、今までの記録が写真として残されている。
 アルバムを眺めていると、かさりと音を立てて、写真が一枚落ちた。
 
・落ちた写真→赤ん坊が車イスにのった女性に抱えられ、男性が庭に小さな苗木を植えている。
 
・精油→アルニカという文字と黄色の花が書かれたラベルが貼ってある。量はまだ充分に入っている。
 
ドライフラワー
 菊の花に似ており、黄色の花弁が鮮やかだった。タグが付けられている。
タグ→アルニカと書かれている。
 
テーブル→メモがある。
『晃生さんへ
 いくら植物が好きだからって、何でもかんでも直ぐに買ってこないでください。
 そういえば、アルニカって捻挫や打撲に効くんですね。驚きました。
少し気になって、アルニカの精油を買ってしまいました。棚の中にいれておきます。
夏乃子より』
 
リビング
 窓からはうっすらと雪が積もった庭が見えている。リビングから庭へ行けるようだ。
 

 この庭は梅の木が一本、植えてあった。5mほどの大きさに育っており、すでに白い花弁が少しずつ姿を現し、枝には小さな芽を沢山つけている。
 また、晴れていれば日光がよく入り、眩しいくらいだ。広さも充分にある。

<アイデア>
※アルバムを見ていた場合
先程の写真でみたものと同じだ。
 
キッチン
 探索者が足を踏み入れた瞬間、飾ってあったドライフラワーが地面に落ちてしまう。繊細な花びらは粉々に砕け散り、無惨な姿に変わり果てる。

<目星>
 キッチンの床に、指を引っかけることができそうな窪みと、小さな鍵穴があった。
※特殊な構造をしているため、<鍵開け>では開けられない。また、この下が生け贄置き場となっている。鍵は乙寧が持っている。
 
<聞き耳>
到底人のモノとは思えぬような、低いうめき声、そして這いずる音が聞こえた。この家には、知ってはいけない何かがいるのだろうか。<sanc0/1>
※杉久が気絶していなかった場合、杉久が呻きながら這う音が聞こえる。
 
【昼食】
※昼食後は自由行動とする。探索者同士で情報を交換しても良いし、従業員に話を聞きに行っても良い。
 
従業員に話を聞く
 乙寧の様子→「今日はいつもより、元気がなかったような気がします。それと、左腕を庇いながら仕事に取り組んでいました。
 あの……。もしかしたら、私の見間違いかもしれないのですが……、お嬢様の腕に血の滲んだ包帯が巻かれていて……。一体どうしたのでしょうか……。」
 
 新しい行方不明者は出ているのか→「いえ、今のところは皆さんいらっしゃいます。(探索者名)様もどうかお気をつけください。」
※大体のことは何でも答えてくれる。
 
※特にやることがなければ、夜まで時間を進める。
 
【夜】
 多くの情報を手に入れた一日であった。この情報が目的の達成に活かされることを願いながら、探索者は眠りにつく。
※PL3と杉久の幸運ロール
どちらも成功なら杉久のsanを−3とHP−1、片方が失敗したらHP−2とsan−5、両方失敗したらHP−3とsan−7
 

【3日目 宿泊最終日】

 騒がしく廊下を走る音で目を覚ます。扉越しに、微かに聞こえた内容は、「乙寧お嬢様が、家から出てこない。」というものだった。
 
 身だしなみを整え、朝食を食べ終えた探索者。あなた達が向かうべき場所は鬼灯 乙寧のもとだ。
 
鬼灯家
 家の前では、数人の従業員がインターホンを押し、扉から中へ声をかけているが、何も返答がない。
 
【入る】
 室内は暗い。空気が淀んでいる。
<聞き耳>
 上の階から女性の声が聞こえる。
※乙寧は自室にいる。
 
乙寧の部屋の前
 ぶつぶつと呟く声が聞こえる。声はここから聞こえているのは間違いない。
 
開ける→扉を開けると、その先から思わず息を止めたくなるような、生臭い鉄臭さが溢れだす。部屋はカーテンで閉めきられており、一切の光を拒絶する。
 そして床には、探索者に背を向けるようにして座り込む鬼灯乙寧の姿があった。また、彼女の周囲にはペンチや金槌といった工具が散乱している。
 彼女は歌うような口調で、絶えず不気味に何かを呟いている。
pc1,pc3<sanc0/1>
pc2<sanc0/1d2>

<聞き耳>
 探索者は、彼女が何を呟いているのか、理解することも聞き取ることもできなかった。
 だが、一瞬、「アザトースさま」と呟く声が聞こえた気がした。気軽に呼ぶことが憚られる名であることを、貴方は即座に感じるだろう。
 
乙寧に近づく
 彼女は両手は赤黒いような色で、ひどく汚れており、手に何かを持っていた。近づいた探索者はそれをはっきりと見ることだろう。彼女が持っていたものは、眼球だ。丸くてぬらぬらと輝くそれは、紛れもなく人の目だった。
 ぐるりと首だけを探索者の方に向けた乙寧。彼女の瞳が収められていた場所に眼球はなく、黒くぽっかりと空いた穴があるだけ。黒い穴が探索者をひたすら見つめる。
 涙なのか血液なのか分からない液体が絶えず流れ出し、彼女の綺麗だった顔を汚している。
pc1,pc3《sanc0/1d3》
pc2《sanc0/1d4+1》
 
乙寧に<目星><医学>
 彼女の両手の指はつぶれていた。爪は歪み剥がれ、つぶれた指先からは骨が露出していた。
 足は可笑しな方向へ曲がり、皮膚が変色している。アキレス腱を引きちぎろうとして、途中で止めたのだろうか。大きく開いた傷口からは、筋肉なのか神経なのか分からないもの飛び出ており、歩くのは簡単ではない。
 そして、自身の体がこのような状態なのにも関わらず、泣き声や呻き声の一つすらあげない乙寧に、探索者はとてつもない恐怖を感じる。
pc1,pc3<sanc0/1>
pc2《sanc0/1d3》
 
工具
 血液や脂と思われる液体が付着している。こびりついていた肉片がべちゃりと音を立てて落ちた。
 
<アイデア>
 夫婦の部屋にある車イスを使えば、楽に乙寧を運べると思い付く。
 
【シャッガイを追い出す】
※場所は梅の木がある庭
 探索者は杉久が書き記した呪文を頼りに、シャッガイを追い出す。一時間ほどたった頃だろうか、虫の羽音のようなものが聞こえると、気を失ってしまった乙寧は雪に埋もれるようにして、その場に倒れこむ。
 すでに時刻は12時をまわっていた。乙寧は明日まで目覚めそうにない。
※KPは明日の朝まで時刻を進めて良いかということと、何かやっておきたいことを聞く。乙寧の側に目覚めるまでいるというのもあり。
※夜はPL3と杉久の幸運ロールを行う。
どちらも成功なら杉久のsanを−3とHP−1、片方が失敗したらHP−2とsan−5、両方失敗したらHP−3とsan−7
 
 暫くすると、旅館の従業員たちが家のインターホンを鳴らしにくる。
※RPをどうぞ。
rp例)「乙寧お嬢様は、どうされたのでしょうか?大丈夫なのですか?」
 
※従業員は乙寧の様子を仕切りに探索者に聞いてくる。
※また、従業員は、今日で宿泊期限が終わりという旨と、なにか事情があるなら従業員の部屋で荷物を預かっておけるということを教えてくれる。眠たくなったら仮眠室を使ってくださいとのことだ。
 

【4日目】

 うっすらと光が差し込む早朝。乙寧はぼんやりと眼球のない目で虚空を見ていた。話しかけても返答はなく、ただじっとしているのみであった。
<精神分析>
※成功なら深夜まで。失敗なら夕方まで正気に戻れる特殊ルール。
 
 乙寧が痛みに悶えるようにうずくまる。掠れた声で呻き声をもらしていた。
 
「いたい……。なにも、見えない。助け……て。……誰か。パパ……。ママ……。(PC2)……。」
 
 自我を取り戻したことによって、まともに痛覚を理解した乙寧は、苦痛と孤独で嗚咽をもらす。
※RPをどうぞ。
rp例)「そこに誰かいるの……?(pc2)なの……?」
 
 PC2の存在を感じ取った乙寧は、潰れた 指先でPC2に触れると、掠れた声で話し始める。
「(PC2)……?
 私、夢で全部みた。もう、生け贄になるのを待つしかないみたい。私の知らない記憶を刷り込まれてる。
 アザトースっていう神様の元に捧げられた私の体は、この世界に残らない。私はパパとママを置いていきたくないの……。二人と同じお墓に入って、一緒に眠りたい……。二人の元へ2度と行けなくなるなんて、辛くて悲しくてたまらない……。
 
 ……だからね、(PC2)。最期にお願い、聞いてくれる?私がこの世から消えてしまう前に、生け贄となってしまう前に、
 
……殺してくれるかな。
 
 私が死んでも、従業員の皆に迷惑はかけないよう、手配してあるから大丈夫。
 なにか言われたら、気が狂った私を正当防衛で殺したと言えば良い。あなたは、何も悪くない……。
こんなお願いしてごめんなさい。……(PC2)、頼んでもいい……?」
 
 そうお願いする彼女の声は震えていた。自身がこのままだと消えてしまうという恐怖。生け贄になれば、両親の元へ二度と行けないという絶望。そして、大切な存在である探索者に、酷い願いをした自身への怒りで彼女の心は一杯だった。

※彼女がこのまま生きていれば、いずれはアザトースを自ら呼び出し、この世から消えてしまう。それは、彼女が最も恐れること。
 精神分析の効果がとけてしまう前に、彼女を殺すことができれば、体をこの世に残せるだろう。これが、彼女を救い、願いを叶えることができる唯一の方法だ。
 彼女が自殺できれば簡単なのだが、彼女は拳銃を握るための指を、自ら潰してしまった。
 

【エンディング分岐】

条件:乙寧を殺す
 乙寧は少し微笑んでみせると、(PC2)に鍵を渡す。
 
「キッチンから地下室に繋がる鍵。これも夢で見たの。まだ生きてる人がいるかもしれない。どうか救ってあげて。」
 
 探索者が引き金を引いたとき、下を向いていた乙寧は、突如(PC2)の方を向いて口を開く。
 
「……私、(PC2)のこと、大好きだったよ。心の底から、愛してた……。」
 
 途切れ途切れの声。体はすっかりぼろぼろだったが、最期にみた笑顔は、今まで見てきた笑顔と何も変わらぬ、大好きな乙寧の笑顔だ。彼女の頬には血液と涙が混ざったような、よく分からない液体が伝っていた。
 
 鮮血が飛び散り、部屋を赤く、赤く、汚す。大切な彼女の体液で、探索者は体を赤く染める。温かくて鉄臭い、ぬめりけを帯びたそれが、静かに床へ滴った。
 もう彼女は、何も喋らない。1mm足りとも動かない。肌寒い部屋には、人を殺めたという息苦しい空気と、血生臭さだけが残った。
 
(pc2)は乙寧の願いを叶えた。
(pc2)は異形の存在から乙寧を守り抜いた。
(pc2)は乙寧を苦痛から解放した。
 
……こうして彼女はやっと、何よりの願いだった“両親と共に永遠の眠りにつくこと”を許されたのだ。
【ハッピーエンド】
(PC2)《sanc0/1d6》
(PC1.PC3)《sanc0/1d3》
 
条件:殺さなかった
 探索者は乙寧の願いを聞き入れなかった。
 
「そう……。こんなお願いしてごめんなさい。」
 
乙寧はうつむくと、探索者に鍵を渡す。
 
「これ、キッチンから繋がる地下の鍵。これも夢で見たの。拐われた人がまだ生きてるかもしれない。どうか救ってあげて。」
 
そう言うと
 
「私は梅の木の側にいきたいな。パパとママと私の思い出の場所なの。つれてってくれる?」
 
(PC2)に話しかける。
※ここでまたエンディング分岐
 
条件:乙寧を梅の木に連れていかない
 探索者が乙寧の願いを拒否すると、乙寧は
 
「せめて今だけ、一人にしてほしい。」
 
と少しだけ語気を強めて放たれた言葉に、探索者は乙寧の言うことを聞くことにした。
 探索者が部屋から出ると、乙寧は這うようにして進み、周囲の物に触れながら、やっとの思いで扉までたどり着く。血のにじむ指を伸ばした先は、扉の鍵だ。かちゃり、と鍵が閉められる音がする。
 今度は窓を目指して這い出した乙寧。痛む体を引きずりながら、器用に窓を開けていく。窓枠に腕を、胴体を、足をかけると、満足げに微笑み、重力に従い落下した。陶器が割れるような甲高い音と、重たいものが打ち付けられたときの鈍い音が同時に聞こえる。
 乙寧は、鉢植えと煉瓦に頭部を強く打ち付け、動かなくなっていた。じわじわと真っ白な雪を侵食する赤。その赤は止まることなく、乙寧を中心に、花のように咲いていった。
 
 彼女は自分の気が確かなうちに、自ら命を絶つことで、アザトースの生贄になる運命を回避した。誰の手も汚さない、優しい自殺だ。今頃、彼女は最愛の両親のもとへ行くことができたのだろうか。
【メリーバッドエンド】
(PC2)《sanc0/1d6》
(PC1.PC3)《sanc0/1d3》
 
条件:乙寧を梅の木に連れていく
 乙寧は梅の木を見ると、やつれた顔で探索者に微笑む。
 
「ここまで連れてきてくれて、ありがとう。暫く、一人にして貰ってもいい?」
 
と申し訳なさそうに、眉を下げて探索者に問いかける。
※乙寧は夜になってもずっと梅の木の側にいる。
※夜になると、乙寧はアザトースを招来するため、乙寧を視認できる位置にいた探索者は巻き込まれる。《sanc1d10/1d100》
 
【アザトースの招来】
 冷たい風が吹き抜け、乙寧の髪を揺らした。彼女が何かを呟くと、辺り一面が突如闇に蝕まれ、飲み込まれる。探索者はその場から身動きが出来ず、気がつけば意識を失っていた。
 単調な気味の悪いフルートの音で目を覚ます。体を起こすと、一片の明かりすらない闇のなかで、乙寧の後ろ姿が見えた。ふらふらと歩く彼女が向かうのは、音楽にあわせて絶え間なく体を動かす不定形な生物。
 その回りでは、その生物をあやすように、目覚めさせないように、永遠と躍り続ける踊り子たちがいる。
 気が狂いそうになる忌まわしい音楽と、溢れ続ける恐怖が探索者にまとわりつき、離れない。闇のなかで眠り続けるそれは、乙寧をあっという間に取り込むと、音楽と共に遠退いて行った。《sanc1d10/1d100》 
 暫く呼吸を止めていたかのような息苦しさを感じ、辺りを見渡せば、そこは梅の花の香りがする庭。
 ただ、乙寧の姿は跡形もなく消えており、車椅子に冷めつつある彼女の温もりと、梅の花弁が残っているだけだった。
【バッドエンド】
※探索者ロストもあり
 
【エンディング分岐 杉久零士】
条件:HPが1以上残っていた。
 キッチンのすぐ側の床には、指を引っかけることができそうな溝と、妙な鍵穴が一つ。
《聞き耳》
到底人のモノとは思えぬような、低いうめき声、そして這いずる音が聞こえた。この家には、知ってはいけない何かがいるのだろうか。<sanc0/1>
※気絶していなければ、上記の音や、衣擦れの音などが聞こえても良い。
 
 乙音から預かった鍵を鍵穴へ差し込み捻ると、かちりという耳障りの良い音を聞き取る。
 窪みに指をかけると、意図も簡単に床の一部を持ち上げることができた。その先は酷く暗く、梯子がかかっているのが見える。ひんやりとした冷気と埃臭さが底から立ち登っていた。
 
降りる→薄暗い部屋の中でも分かるような鮮やかな赤で、壁も床も汚れていた。濃密な血液の匂いに顔をしかめながら辺りを見渡すと、蹲るようにして倒れている人影を見つける。
 (PC3)は直ぐにわかった。あの服装は、長らく探していた友人、杉久零士だと。
 
杉久零士に近寄る→体中に重度の怪我をおっていた。爪は剥がされ、肉が露出していた。頬は痩せこけ、青ざめているのがわかった。かなり衰弱しているが、探索者の腕の中で微かに呼吸をしている。
 貴方に抱えられながら、生温かい血液を流す彼は、確かに生きていた。
【ハッピーエンド 】
 
条件:杉久のHPがOだった。
 キッチンのすぐ側の床には、指を引っかけることができそうな溝と、妙な鍵穴が一つ。
《聞き耳》何も聞こえない。
 
 乙音から預かった鍵を鍵穴へ差し込み捻ると、かちりという耳障りの良い音を聞き取る。
 窪みに指をかけると、意図も簡単に床の一部を持ち上げることができた。その先は酷く暗く、梯子がかかっていた。ひんやりとした冷気と埃臭さが底から立ち登っている。
 
降りる→薄暗い部屋の中でも分かるような鮮やかな赤で、壁も床も汚れていた。濃密な血液の匂いに顔をしかめながら辺りを見渡すと、蹲るようにして倒れている人影を見つける。
 (PC3)は直ぐにわかった。あの服装は、長らく探していた友人、杉久零士だと。
 
杉久零士に近寄る、触れる→杉久の体はぼろぼろだった。爪を剥がされ、皮膚を切りつけられていた。眠ることもままなからなかったのか、目の下には隈ができている。頬もすっかり痩せこけ、ろくに食事をとることもできなかったのだろう。あまりにも痛々しすぎる杉久の姿を、探索者は直視できない。
 また、探索者は杉久に少し触れただけで気づいてしまう。彼は、すでに呼吸をしていないということに。
 余りにも冷たく、そして硬くなった肉体は、無惨にも探索者に彼が死んだと言うことを告げていた。いくら名前を呼びかけたところで、彼は二度と口を開くことはなかった。
【バッドエンド】
(PC3) 《sanc0/1d6》
(PC1.PC2)《sanc0/1d3》
 

【家路につく】

 事件に巻き込まれた探索者は、身も心も疲弊していた。ぼんやりとした頭で警察からの事情聴取をうけ、事件は乙寧の精神疾患として処理された。
 大切な存在を亡くした探索者や、その他の探索者にとっても、この事件は自身に大きく傷跡を残すものだったはずだ。
 忙しそうに駆け回る旅館の従業員に見送られ、探索者はこの地を去る。主人を失った旅館ほおずきはどうなってしまうのだろう。
 空は灰色に曇り、雪が降りつつある。手のひらに落ちてきた雪の結晶が、探索者の熱で溶かされて水滴に成り果てた。肌を切り裂くような寒さが、鋭利な刃物のようで痛かった。
 (PC1)は無事家路につき、事件の熱が冷めたころ、もしくは家に帰ってすぐ記事の制作に取り掛かるかもしれない。
※記事の制作に見合った技能を振る。写真術で上手く写真をとれた分だけプラス補正をして良い。
 
失敗→(PC1)が書いた記事は、人の目に留まることはあったものの、月日を追うごとに色を失い風化していった。
 やがて、誰の目にも触れられることがなくなり、日々増えていく様々な情報に埋もれていった。
 いつか、自身がこの記事を書いたことすら、忘れてしまう日かくるかもしれない。
 
成功→(PC1)が書いた記事は、多くの人の目に留まることとなった。どれだけ月日が経とうとも、その記事とほおずきの噂は色褪せることなく人々の記憶に残り続ける。
 激動の瞬間にいた貴方自身もまた、いくら日々が過ぎ去っても、あの事件を忘れることが無いだろう。
 
クリア報酬 それぞれの目的を果たした san回復1d10
クトゥルフ神話技能 +2%
 

【解説】

 シャッガイを追い払おうとも、乙寧は記憶を植え付けられているため、精神分析の効力が切れた瞬間、アザトースの元へ行こうとする。
 そのため、それを理解している彼女は、殺してほしいと願う。乙寧は体をぼろぼろにされ、出来ないことはないが、自ら命を絶つのが難しい体になっている。
 神話生物などの情報は、KPが必要そうな所を抜粋して教えれば良い。
 拳銃は弾が二発入っている。なぜならこれは、探索者の自害用。愛する人を失った悲しみに耐えられないのなら、探索者自身も後を追えば良い。という制作者の良心によって設置してある。
 

【あとがき】

「脳に巣食う者(のうにすくうもの)」のプレイ、閲覧をありがとうございます。今回はハンドアウト付のシティーシナリオを書いてみました。1番辛いのはPC2かな?
 テストプレイの結果は、どちらもハッピーエンドでした。PC3の幸運が30 %しかないにも関わらず、ほぼ全部成功で杉久が生き残るエンディングにたどり着きました。ダイスの女神が微笑んだようです。
 杉久が生き残ったことにより、あまり後味の悪さは感じなかったようです。(みんなの感覚が最近麻痺してる気がする。)
 複雑なところや分かりづらい所が多々あると思いますので、何か不明な点がありましたら、気軽にご連絡ください。

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