2024年07月30日更新

人魚の浜

  • 難易度:★★|
  • 人数:1人~2人|
  • プレイ時間:1時間(ボイスセッション)

「__それでも、あなたは生きていたい?」
 
・形式 クローズド
・推奨技能 目星、聞き耳
・推奨人数 1人~2人
・推定時間 30分~1時間
 
【あらすじ】
生き物が居らず、澄みきった青い海。暖かくもなければ、沈まぬ夕陽。まるで、時が止まっているかのような世界で、探索者は目を覚ます。恐ろしく静かな浜辺から、波の音に乗り響く美しい歌声。探索者は生きて帰ることができるのだろうか。それに、 冷蔵庫の“ニンギョノニク”という文字は一体……?
11/27 描写修正、11/28 NPCの関係性を修正、1/1少年出現場所修正、2/10エンディング追加

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ストック

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コメント

人魚の浜

__それでも、あなたは生きていたい?
'画像'
 

【背景】

海へ遊びに来ていた探索者だったが、少年が溺れているのを助けようとしたところを波に飲み込まれ、親子もろとも溺死。その一連の事故により、記憶を一時的に失う。探索者の善意と優しさを見ていたニャルラトホテプは、探索者にもう一度生きるチャンス与えた。

【NPC】
結城 透(ゆうき とおる) 35歳 男
少年の父親。二人で海で遊んでいるところ、溺れた息子を助けようとし、死亡。フルネーム以外の記憶を失っている。妻とはずっと昔に別れている。
 
佐伯 大輔(さえき だいすけ) 7歳 男
水難事故により死亡。フルネーム以外の全てを忘れる。幼いときに両親が離婚。その後、母親に引き取られる。顔は母親似。
久々に父親と会えた日に水難事故にあってしまった。
 
【あらすじ】
生き物がいない青い海。暖かくない沈まぬ夕陽。まるで、時が止まっているかのような世界で、探索者は目を覚ます。恐ろしく静かな浜辺から、探索者は生きて帰ることができるのだろうか。 冷蔵庫の“ニンギョノニク”という文字は一体……?
 
【導入】
心地よいさざ波の音と、潮の匂いで目を覚ます。すると、そこは赤い夕日に照らされる海の上だった。木造の小さな舟に揺られているのは、1+(探索者人数)人。
30代前半の男がおり、眠っているようだ。岸は少し離れた所にあり、舟を漕いでいけば、すぐに岸に上がることができるだろう。
そして探索者は違和感を覚える。探索者は、自身の名前しか覚えていなかった。見覚えのない場所にいたことと、自身の記憶がないことから不安感を募らせる。
<sanc0/1>
また、浜辺には小さな小屋が見えていた。
※RPを開始して下さい。
 
探索者の衣服
水着を着ている。荷物はない。
 

木の割れ目から海水が染みだしている。このままでは沈んでしまう。また、オールは破損している。
 
眠っている人
水着を着ている。小さな寝息を立て、眠っている。
 
声を掛ける→探索者が声を掛けると、男性は目を覚ます。彼は探索者と同じく、記憶を失っていた。
 

澄みきった青色が夕日に照らされ、輝いている。
《目星》
生物がおらず、小魚の一匹すら見つからない。
 

探索者を照らす夕陽。あまりにも眩しく、直視することができない。
《アイデア》
探索者は違和感を感じる。この夕日は、ただ眩しいだけで暖かくなかった。また、暫く眺めていると気づく。この夕陽は全く沈む気配がない。まさに時が止まっているようだった。作り物めいたこの世界に不気味さを感じる。<sanc0/1>
 
全体に《聞き耳》
※失敗しても聞こえる。成功した探索者はpow*5の判定を行う。
波の音に紛れるようにして、美しい歌声が聞こえる。心地よい歌声に頭がぼんやりとする。
POW*5 失敗→探索者は気がつくと海の中へ、腰まで浸かっていた。このまま進んでいたら、溺れていただろう。吸い込まれるような歌声に背筋が凍る。<sanc0/1>
 

【浜辺】

小屋は木造で、入り口付近には食べ物やその値札、かき氷を作る機械が並べられていた。壁にはボートや浮き輪などといったものが置いてある。海の家のような風貌だ。
中を覗くと、そこには7歳ほどの少年がおり、焼きそばを頬張っている。

少年 (佐伯 大輔)
探索者に気がつくと、「お兄さんたちだれ?」と問いかけてくるだろう。人懐っこい子だ。
名前以外の記憶は消失。

少年と男性の関係性
<アイデア> 顔の面影もそうだが、雰囲気がどことなく似ている
 
食べ物
焼きそばだろうか。手にとってみると温かく そしてソースの良い香りがした。探索者は少し空腹感を覚える。
カウンターにお金が置かれており、少年が支払ったものだろう。
食べる→少し腹が減っていたということもあり、とても美味しく感じる。
※結城 透は金銭を持っておらず、空腹ではないためこの世の食べ物を口にすることはない。
 
小屋から離れるようにして歩く
小屋から離れていた筈なのに、気がつくとまた小屋まで戻っている。何度繰り返しても、探索者はこの場から離れることはできなかった。<sanc0/1>
 
小屋の中へ入る
薄暗く、少しばかり肌寒い。人は居らず、テーブルや椅子が置いてあるだけだ。奥に扉が1つある。
 
小屋《目星》
木目の床に、染みができていた。赤黒いような丸い染みがいくつも出来ており、奥の扉へと引きずったような痕が続いている。
 

【奥の扉】

鍵はかかっていないが、立て付けが悪くなっているのか開かない。
[Str対抗 扉のStr11][耐久値 10]
 
扉を開ける
薄暗い。目を凝らして見ると、中は小さな厨房であることがわかる。シンクの側に赤表紙の本と、古びた冊子が置かれていた。巨大な冷凍庫には紙が貼られており、床には紙が落ちていた。シンクの側には扉がある。
 
床の紙
『不老不死に目がくらみ、邪な思いを抱いた人間は、人魚の怒りを買うだろう。』
 
赤表紙の本
読む→『-人魚の肉-人魚の肉を食べると不老不死になる。というのは有名な話だろう。数百年、数千年経とうが、年をとることはない。周りの人間が死んでいっても、自身は何時だって取り残される。人間であることを捨てる勇気があるのならば、食べてみれば良いだろう。だが、自然の摂理に逆らうその行為は、重すぎる罪だ。』
 
古びた冊子
読む→『-黄泉戸喫-(ヨモツヘグイ)ヨモツヘグイとは”死者の世界の食べ物を食べること”である。死者の世界で食べ物を口にしてしまったのなら、もう二度と現世へ戻ることはできない。
 
……だが、人魚の肉。あれは人間であることと引き換えに永遠の命を得られる。もしこの世の物を食べてしまったのなら、生きる術はこれしかない。』
 
【探索者への問い】
人魚の肉、そしてヨモツヘグイについて知ってしまった探索者。少年は先程、この世の食べ物を口にしている。もしかすると、探索者自身もすでにこの世の物を食べてしまったかもしれない。
__それでは、探索者に問おう。
探索者は、少年が、または自身が、人間であることを捨ててでも、生きることを選ぶのか?
それとも、人間であることを最後まで守り抜き、生きることを諦めるのか?

時間は充分にある。よく考えて選べば良い。
 
冷凍庫(siz18)
紙を見る→『ニンギョノニク メス ××月××日(海に遊びに来ていたので、夏で良いかと)』
開ける→冷気がふわりと流れ込む。中から現れたものは、上半身が人間、下半身が鱗に包まれた魚のような生物。長いまつげに縁取られた緑色の瞳が宝石のようだった。首を切られており、乾き、凍った血液で皮膚を汚していた。死んでいたが、その容姿は人間離れした美しさを纏っており、死体を見ているのにも関わらず、探索者は目を逸らすことができなかった。
<sanc 0/1>[人魚 App25]
 
人魚の肉を食べる
今までに食べたことのない、形容しがたい味。柔らかく、甘く、そして何よりも美味だった。一口食べただけで、“もっと食べたい”と手を伸ばしてしまうような依存性がある。今のところ、目に見える異変はない。ただ腹の奥が酷く熱い。

少年に人魚の肉を食べさせる
少年は「これは何のお肉?」と興味津々のようで、喜んで食べる。食べ終えると、「何だか体がぽかぽかするね!」と言っている。

男性に人魚の肉を食べさせようとする
男性はとくに空腹ではないようで、店の食べ物や肉にも興味をさほどしめさないため、口にすることはない。
 

金属製の扉。ボードがあり、そこには『現世はこちら』と書かれていた。
 

【エンディング分岐 探索者編】

条件:この空間に残った
記憶の無い探索者たちは、ここに残ることを選んだ。どれ程の時間が経過したのか分からないが、未だに陽は沈まない。
ふとして、貴方は思う。唯一覚えていた自分の名は何であっただろう。と。
あぁ、まただ。また、あの美しい歌声が聞こえる。
貴方は夕陽に照らされながら、その歌声に耳を傾けた。そして、誘われるように、吸い込まれるように、深い海底へと進むのであった。
【ロストエンド】
※全員がロストする。ある意味、一番のハッピーエンドかもしれない。
 
条件:ヨモツヘグイをし、人魚の肉を食べた。
現世へと続く扉をくぐる。潮の匂いがする風が吹き、視界いっぱいに光が広がった。探索者は思わず目を閉じる。暫くすると、消毒液のような鼻につく匂いがした。ゆっくりと目を覚ますと、そこは見慣れない白い天井。重く、怠い体を無理やり起こす。腕から管がのびており、その先には空になりつつある点滴がぶら下がっていた。
足音が聞こえ、リノリウムの床に影がさす。

「(探索者名)さん。点滴、そろそろ変えますね。」

ふと現れた看護師は、起き上がっている探索者を見ると

「あら!目を覚ましたんですね。(探索者名)さん、海で溺れた男の子を助けようとして、一緒に溺れたんですよ。覚えてますか?昨日から全く意識がない危険な状態だったのに……。
嘘、怪我も全部塞がってる。いま先生を呼んできますね。」

と、慌てた様子で病室を後にする。
探索者は、現れつつある自身の異変を感じとり、大人しくベッドに身を沈める。

どれくらい経っただろうか、満面の笑みで投げかけられる“奇跡的に助かった”という医師の称賛の言葉。普通ならば幸福で満たされるはずだろう。だが、それは探索者にとって、お前は既に人間ではないと言われているのと同じであるのだ。
【バッドエンド1】 〈sanc0/1d6〉
探索者は不死身となった。怪我をしてもたちまち治り、死ぬことはない。見た目も一生そのままである。以後この探索者を使う場合は、KPと要相談である。
 
条件:ヨモツヘグイをし、人魚の肉を食べなかった。
現世へと続く扉をくぐる。潮の匂いがする風が吹き、視界いっぱいに光が広がった。探索者は思わず目を閉じる。
こぽり、こぽり……と水の音が聞こえる。母親の中にいる胎児は、このような気分なのか。と呑気なことを考え瞼を上げれば、そこは光が差し込む海中。意識はすでに遠退きつつある。ただの人間である探索者は、水中で容易く死んでしまう。
だが、探索者は苦しさなど感じていなかった。むしろ、この脱力感が妙に心地よいとさえ感じていた。酸素を得ようと、もがくことを諦めてしまった腕はだらしなく投げ出されている。
きらきらと輝く水面を眺めながら、探索者の体と意識はゆっくりと海の底へ沈んでいく。消え入る意識の中、どこか遠くで美しい歌声が聞こえた気がした。
【ロストエンド】
 
条件:ヨモツヘグイをせず、人魚の肉を食べた。
現世へと続く扉をくぐる。潮の匂いがする風が吹き、視界いっぱいに光が広がった。探索者は思わず目を閉じる。
 暖かい。なんて体が軽いのだろう。目を覚ますと、そこは一面の青だ。水中にまっすぐ光が差し込み、あたりを照らしていた。幻想的な美しさに目を奪われる探索者だったが、体に異変を感じる。
 探索者は苦しくなかった。水中で呼吸ができていた。普通ならば酸素を求め、もがくはずなのに。
驚いた探索者は、自身の体を見る。探索者の体には、魚と同じ硬質な鱗が輝いていた。光を反射し、様々な色に変化する鱗が。
指の間には小さな水かきが現れており、探索者の姿は人でなければ人魚でもない、誰が見ても醜悪でおぞましい化物へと変貌していた。貴方は、人魚の怒りを買ったのだ。《sanc0/1d6》
【バッドエンド2】
後遺症:探索者は人魚の肉を食べたことにより、人の姿を保てなくなる。
・皮膚 顔、腕、足、など、体が硬質な鱗で覆われる。[App-3]
・手 小さな水掻きが生える。
・足 地上なら[DEX-3]水中なら[DEX+2]また、水泳+30
・人の食事が取れなくなる。[異食 何でも良い]
・水中での呼吸が可能になる。
・不老不死になる。
 
条件:ヨモツヘグイをせず、人魚の肉も食べなかった。
現世へと続く扉をくぐる。潮の匂いがする風が吹き、視界いっぱいに光が広がった。探索者は思わず目を閉じる。暫くすると、消毒液のような鼻につく匂いがした。ゆっくりと目を覚ますと、そこは見慣れない白い天井。頭が痛い。無理やり起こす。腕から管がのびており、 その先には空になりつつある点滴がぶら下がっていた。
足音が聞こえ、リノリウムの床に影がさす。
 
「(探索者名)さん。点滴、そろそろ変えますね。」
 
ふと現れた看護師は、起き上がっている探索者を見ると
 
「あら!目を覚ましたんですね。(探索者名)さん、海で溺れた男の子を助けようとして、一緒に溺れたんですよ。覚えてますか?直ぐ病院まで運ばれたので、軽症で済みましたよ。いま先生を呼んできますね。」
 
果たして先程のは夢だったのか。ふと窓の外を見れば、そこからは真っ青な海が一望できた。探索者はその青さに誘われるように、空の点滴を引きずりながら窓辺へ近寄る。窓が微かに開いており、そこからは潮の匂いがした。ベッドへ引きかえそうと踵を返すと、その窓の隙間から潮風に乗って、あの夢の中で聞いた美しい歌が聞こえた。背筋が粟立つ。冷や汗が伝った。
あれは、夢じゃなかったのか?
そんなことを考えながら、探索者は怠い体をベッドに預けた。
【ハッピーエンド】
San回復 2d3
 

【エンディング分岐 少年(結城 大輔)編】

条件:少年に人魚の肉を食べさせた。
病室で目覚めた探索者。ぼんやりとしながら、窓の外を眺めていると、廊下で声をひそめて話す女の声が聞こえた。静かな病室には、小さな声でもよく響く。
 
「ねぇ聞いた?海で溺れた親子、さっき目覚めたって。」
「本当?あんな危険な状態だったのに……。奇跡としか言いようがないわ。」
「しかも、大輔くんは傷が全部治ってたらしいの。」
「嘘でしょう?運ばれてきたときは、身体中傷だらけで衰弱してたでしょう?。」
「そうなの。少し、異常すぎる治癒力だと思わない?
__なんだか、人間じゃないみたい。」
 
次第に遠ざかって行った声。腹の底に冷たいものがたまっていくような、気持ちの悪い感覚。体はさらに怠さを帯びた。
少年に人魚の肉を食べさせたことにより、彼は生きている。瀕死に値する怪我でさえ治してみせた。だがそれは、少年に植え付けられた、決して逃げることの出来ない呪いだ。
少年は何年経とうとも、そのあどけない容姿を変えない。まだ幼い我が子の成長を見ることなく、あの父親は生涯を終えることだろう。不老不死の化け物に成り果てた少年は、愛しい存在と同じ時間を生きれず、いつも一人取り残される。
 
それでも、少年は生きなければならない。生き続けなければならない。
 
__幾度となく繰り返される、孤独と絶望に苛まれながら。
【バッドエンド】
 
条件:少年に人魚の肉を食べさせなかった。
病室で目覚めた探索者。ぼんやりとしながら、窓の外を眺めていると、廊下で声をひそめて話す女の声が聞こえた。静かな病室には、小さな声でもよく響く。
 
「昨日運ばれた患者さんいたじゃない。」
「あぁ、海で溺れたっていう親子と救助しようとした方ね。」
「結城さんの息子さん……さっき亡くなったって。」
「そう……。ダメだったのね。体も傷だらけで、大分衰弱していたし……。お父様の方は?」
「父親の方は、なんとか一命をとりとめて、目覚めたそうです。息子さん、まだあんなに小さかったのに……。7歳ですよ?こんなの、酷すぎます。どうにかして、助けてあげられなかったのでしょうか……。」
 
小さく嗚咽を漏らす女の声が遠ざかっていく。探索者の意識が、次第にはっきりと、鮮明になっていく。
少年に人魚の肉を食べさせなかったことにより、彼の命は終わりを迎えたのだ。わずか7歳程度の少年は、その柔らかな肌を傷だらけにし、肺を海水で満たす。懸命に酸素を求めた腕は投げ出され、声にならない声で父の名を呼び、散々もがき苦しみ抜いた末に死に至った。
 
だが、探索者は少年が人であることを守り抜いた。少年が時間に取り残され、孤独と絶望に苛まれるのを防いだ。
 
__これで良かった。間違っていない。と自分に言い聞かせるよう目を瞑った探索者の脳裏には、まだ幼い少年の顔がよぎった。
【ハッピーエンド】
 
【あとがき】
如何でしたでしょうか。【人魚の浜】閲覧、プレイありがとうございます。
このシナリオは、友人が過去に作ったシナリオを、私が後味悪く改変、付け足しして仕上げた作品となっています。
友人が作ったこのシナリオをやったときは、海水舐めてヨモツヘグイ判定になり、友人PCを残してロストしました。笑える。ロストの反動で改変したと言っても過言ではない。(おぞましく改変し過ぎだと言われた)
恐らく作ったのは去年のこれくらいの時期だったかなぁ。シナリオのストック無くなっちゃったので、ついに出しました。
もちろんこのシナリオの評価は、友人たちから大不評。私は好きですけどね。
バッドエンドばかりで、人を選ぶかもしれません。でも、そういうのが好きだよ!って方には是非とも回して頂きたいです。
質問等ございましたら、みむりまでお気軽にご連絡ください。あなたのクトゥルフライフが、より良いものになれば幸いです。
1/2 少年のヨモツヘグイを自然な感じにするために、最初から海の家へ変更しました。

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